外国で困る日本人の名前はたくさんある
外国語は基準にしなくていい
A おっしゃる通り、日本では一般的な名前でも外国では良くないイメージに繋がる名前は意外にたくさんあります。今は海外勤務、国際会議、国際試合の多い時代ですから、現実に名前で困ることはあります。
外国人の名前もときに日本でおかしく聞こえます。かつてロシアのKGB議長を務めたバカーチン(Бакатин)や、フィンランドのスキージャンプ選手であるアホネン(Ahonen)、イタリアのレーサーのウンチーニ(Uncini)などの名前は、日本人にはおかしく聞こえてしまうかもしれません。それと同じことは当然日本人の名前でもおきるわけです。
「まぬけ」「てめえ」「酔っ払い」「陰毛」「性器」「糞」「下痢」「ゴミ」「ちび」「狂った人」「あばずれ」……。こんな名づけは無いでしょうが、日本でごく普通の名前が、国によってはそのように聞こえることがあるのです。
名づけの基準にはしなくてよい
しかし海外で変に聞こえる名前はつけてはいけない、ということではありません。そういう例はあまりに多くてキリの無い話になりますし、海外といっても一般論は無く、言語によりけりだからです。日本人の名前がとくに支障が出やすいのはフランス語とビルマ語ですが、世界中の言語を気にしていては名づけはできませんから、名づけの際に外国語を話の中心にすえる必要はありません。命名相談をお受けする際も、候補のお名前がどの言語で響きが良くないかはコメントしますが、だからつけてはいけない、ということではなく、日本で支障の無い名前ならOKなのです。
ただしつけるのはいいですが、その名前がどの国で使いにくいかを本人が知っていた方がいいでしょう。そうすればその国では別の名前を名乗るなど、対策はいくらでもできます。
外国では名字でも問題が起きることがあります。昔、文化庁長官であった今日出海(こんひでみ)氏は、フランスとの文化交流に力を注いだのですが、コンという名字がフランス語では禁句に近かったので、フランス訪問の際に困ったそうです。東大仏文科を出た人ですから最初から知っていたはずですが、政府の要人がその時だけ名字を取り替えることもできなかったのでしょう。
また日本では「中」のつく名字がたくさんあります。かつて中村俊輔氏がイタリアのサッカーチームに移籍した時、監督は「これからは彼をナカと呼ぼう」と笑顔で言いました。しかしサッカーはアラブ諸国との試合も多く、ナカという音はアラビア語ではやはり禁句です。試合中に観客が「ナカ」「ナカ」と大声で応援したらとんでもないことになります。
外国の話に一般論はありませんが、せめて英語くらいはチェックしておきたい、という方は、カント、ケイジ、コウマ、シュウ、ショウ、シュウト、ショウト、セイラ、ダイ、タイト、マチ、マミ、ユウダイ、ユキ、リクなどは、英語圏で人によってはおかしな連想を起こす、と知っておかれると良いでしょう。またローマ字で書いた時、AN、SHI、KOT、TAIを含む名前は、それぞれペルシャ語、フランス語、ドイツ語、インドネシア語で糞尿を連想しやすいことを知っておかれるといいでしょう。
しかしそういう名前は非常に多いですからあまり神経質にならず、別の愛称などを用意しておいて国によって適当に使い分ける、ということの方が本当の国際感覚ではないかと思います。