戸建て業界の人材・資材の確保、工事監理の実態とは
年間で一定量の規模の仕事量が見込まれることから、あらかじめ年間契約を結ぶことで、これも一定の数の工事関係者を常時確保できるのです。長年の付き合いがありますから、人の入れ替わりが少ないのも特徴です。施工品質についても、事前に技術研修などを行ってそれぞれのハウスメーカーが求める水準レベルを満たす取り組みをしています。材料の調達についても年間契約で確保しますから、1棟ごとの調達になりやすいマンション業界と比べ購入コストの変動が少ないといわれています。これは地域の有力工務店も同様。質の高い住まいづくりを目指しているハウスメーカー、工務店ほど人材の確保や材料調達には気を遣いうまく調整しています。
工事監理についてはなかなか難しい状況。戸建てであれマンションであれ、あらゆる建物の施工現場には必ず工事責任者(現場監督)がいなくてはならないのですが、現実的には1人が数棟を掛け持ちしていることが常態化しているようです。そうすることで人件費の削減などを図る狙いがあるのです。
しかし、しばしトラブルが発生します。具体的には現場に工事責任者が常駐していないことを告発され、工事が中止、さらに行政から営業停止などの処分を受けるというケースです。これはライバル会社や作業者などからのやっかみが原因ということが多いようです。
ちょっと小難しい話になってしまいましたが、要するに建設業界というのは本音と建て前で動いている部分があるということです。ですので、私たち消費者はそうしたことを理解しつつ、トラブルに巻き込まれないように対策をしなければいけません。
トラブル回避につながる「施工現場を見に行く」ということ
では、どうしたらいいのでしょうか。私は単純ですが、「施工現場に行く」ことが重要だと思います。契約して着工した建物はもちろんですが、住まいづくりを検討する上でも非常に大切な要素になると思います。施工現場はハウスメーカーや工務店などそれぞれの性格がよく反映される場所です。戸建て住宅の施工現場の様子(2)。施工現場では大工さんや職人さんの身なりにも注目したい。この建設現場では作業する人たちがヘルメットを着用しており、安全面の配慮があり現場の統率が取れていることがみてとれる
例えばヘルメットをせずに作業している現場があるとします。私ならそこから「この住宅会社は安全に配慮をしていない」、あるいは「現場で作業する人を大切にしていない」と判断します。もし、あなたの住まいづくりで誰かが、死傷事故が発生したらどう思われるでしょう。きっと嫌なはず。
これから長く住み続ける家にトラブルが起こると縁起でも無いと思われるはずです。着工後にはできれば週に一度程度は現場を見に行きましょう。お施主さんが見学に来ると、実はそこで働く大工さんや職人さんはうれしいもの。作業に気合いが入りますから、作業の精度も上がるはず。皆さんにとっても住まいづくりの良い思い出にもなるので、是非お勧めします。
私はこれまでオールアバウトの記事を通じ、「今後は住宅の施工が難しい状況を迎える」ということを何度か書いてきました。今回の億ション施工ミスの問題は、いよいよそれが本格化、表面化する端緒となるのだと指摘できそうです。建設業界は「クレーム産業」と呼ばれますが、それは何より人に依存する度合いが非常に大きな世界だから。
近いところでは姉歯建築士によるマンションの耐震偽装事件などがあり、「欠陥住宅」の問題は記憶に新しいことです。特に戸建て住宅の世界は供給者が多種多様ですから、欠陥問題を契機にした依頼先の倒産などより大変な事態につながりかねません。ですので皆さんには、今回の億ションの施工ミス問題をトラブルを回避するための教訓として頂きたいと強く思います。