既にベテラン、お得意様から指名でリフォームの依頼
指名で依頼を受ける特命工事はうれしいもの。
会社にではなく、会社内の個人宛てに指名で頂く工事のことを、業界では「特命工事」などと呼び、このような仕事に就いている人間からすればとても嬉しいことです。
今回の内容は、東側の窓にちょっとおしゃれなシェードを付けたいとのこと。そこでカーテンの実例写真集やシェードのカタログ、サンプルなどを持って、お客様のところへ伺いました。
東側にはカーテンが付いていない引き違いの腰窓があった
あの窓がね、朝日がまぶしいのでシェードを付けたいの
「あの窓がね、朝日がまぶしいのでシェードを付けたいの」と窓のほうを指さして言いました。
なるほど、東側にはカーテンが付いていない引き違いの腰窓があり、確かに朝日がまぶしそうに見えます。あの窓ならシェードを取り付ければきれいに納まりそうに見えました。
ケーキを頂きながら優雅に打ち合わせ
わざわざケーキを焼いて待っていてくれたお客様。
カーテンの採寸1か所程度なら、もう慣れたものですから下地の確認も含めて1分も掛かりません。採寸を終えると、私はテーブルに戻りお客様がケーキの準備をしてくれるのを待ち、ケーキを頂きながら優雅に打ち合わせを行いました。
取り付け現場から緊急の電話「取り付けができない!
現場からシェードの取り付けができないという緊急の連絡が!
ところが、取り付け当日、現場に行った職人さんから、緊急の連絡が入ったのです。
いわく、「シェードの取り付けができない、とにかくすぐ来てくれ」とのこと。そんなはずはありません。サイズも品番もデザインも間違いなく、取り付け方法にも問題は無いはずです。慌てて現場に行ってみると、お客様は私が採寸した腰窓の横にある、小さな縦長の窓を指さして言いました。
「まぶしいのは、その窓じゃなくてこの窓よ」
あの窓はその窓じゃない!
お客様が指をさした方向にはもうひとつ小さな窓があった
しかしカーテンを付けるならこっちの開閉する大きな窓、と当然のように思い込んでしまったのです。小窓は不透明だし小さいし、こんな窓にはカーテンは要らないと無意識に思っていました。
しかも私が間違った窓を採寸している間、お客様はケーキの準備で中座されていたため、間違いが発覚できただろう唯一のチャンスを失って、そのまま進んでしまったのでした。
こんなリフォームトラブルがあちこちで起きている?
どの枠のどこからどこまでをどんな風に塗装するのか?見積書だけからわかりますか?
このトラブルはあまりにおっちょこちょいで笑い話のようですが(私は冷や汗をかきましたが)、実は似たようなトラブルが、リフォームの現場のあちこちで起きていたりします。
そしてこのトラブルから得られる教訓が2つあります。1つめは、業者と依頼主の間に認識のズレがある可能性があること、そしてそのズレを修正するチャンスは複数回必要であることです。
認識のズレは必ずといっていいほど起こる
現場で工事内容を一項目ずつ指さし確認。
例えば、見積書に「枠まわり塗装工事」という項目があったとします。しかし、どの枠のどこからどこまでをどんな風に塗装するのか?簡単な打ち合わせだけで正しく把握できる人はなかなかいません。
リフォームは、部分的に壊して作り変える工事の積み重ねですから、どこからどこまで工事をするのか、工事範囲を見極めるのがとても難しいのです。リフォームでは、設計者と現場管理者、現場管理者と職人さんたちとの間など、プロ同士でも認識のズレが起きることがあります。
リォームの際には、このズレを防ぐために、少なくても見積書を受け取る段階で1回、契約書を交わす段階で1回、現場で工事内容を一項目ずつ指さし確認しあうことが必要です。これは私が2001年にホームページ「リフォームのホント・裏話」を開設した時から言い続けていることです。
正しく手順を踏んでいれば修正のチャンスはあった
この現場は、本来そんなに難しい現場ではありませんでした。最初はちょっとした勘違いからスタートしました。しかし間違いが発覚する唯一のチャンスが採寸の時だけだった、これがこのトラブルの一番の原因です。正しく手順を踏んでいれば、本来ならそこから何度でも修正のチャンスはあったはずなのです。認識のズレは必ずといっていいほど起こります。しかし契約前にそれがわかれば、不要なトラブルは防いでいくことができます。
Copyright(c)2014 一級建築士事務所 Office Yuu,All rights reserved.