ドリブラー枠を勝ち取るのは?
国内外で活躍する若手有望株を紹介する。
日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督は、攻撃に変化をつける交代選手としてふたつのタイプを用意してきた。
ひとつは高さを持った選手だ。以前にも触れたハーフナー・マイク(フィテッセ/オランダ)や豊田陽平(サガン鳥栖)らである。
もうひとつはドリブラータイプだ。
乾貴士(フランクフルト/ドイツ)、齋藤学(横浜F・マリノス)、原口元気(浦和レッズ)、大津祐樹(VVVフェンロ/オランダ)らが、ザックのもとで相次いでテストされてきた。ブラジル・ワールドカップのメンバーにも、「ドリブラー枠」は含まれていると考えていい。
2014年のシーズンに、巻き返しを期す選手がいる。
宇佐美貴史(ガンバ大阪)である。
少年時代から多いなる飛躍を保証され、年代別代表でも活躍してきた彼は、2011年6月にバイエルン・ミュンヘンへ移籍する。ヨーロッパ全土にその名を轟かすドイツの超名門クラブが、宇佐美の将来性に注目したのだ。
フランク・リベリー(フランス)やアリエン・ロッベン(オランダ)らのスーパスターが在籍するチームで、レギュラーを獲得することはできなかった。それでも、2012年夏のロンドン五輪に出場し、バイエルンからホッフェンハイム(ドイツ)への移籍も勝ち取った。2012年11月には、およそ1年半ぶりに日本代表へ招集された。
風向きが変わったのは、2013年である。ホッフェンハイムで出場機会が減少し、日本代表から再び遠ざかってしまうのである。
だからといって、プレーの輝きが失われたわけではない。13年6月からガンバ大阪に復帰すると、出場18試合で19ゴールを叩き出した。
昨シーズンのガンバは、J2でプレーしていた。宇佐美のポテンシャルを考えれば、驚くべき数字ではない。
鋭いドリブル突破には以前から定評があったが、ドイツでの2シーズンを経た現在はシュートの精度を高めている。さらに加えて、シュートのバリエーションも豊富になってきた。今シーズンのJ1で昨年同様のインパクトを残せば、ザックが興味を寄せる可能性は膨らんでいく。
同じドリブラーでは、宮市亮が気になる。
宇佐美と同じ1992年生まれの21歳は、高校卒業と同時にヨーロッパへ渡った。イングランドの名門アーセナルと契約し、いくつかのクラブへのレンタル移籍を経てアーセナルへ復帰する。
だが、リーグ戦で久しぶりに好調を維持するチームで、出場機会を得ることができていないのだ。ザックのもとでプレーしたのも、2012年10月のブラジル戦が最後となっている。
彼らより学年がひとつ上の原口元気も、今シーズンは期するものがあるはずだ。所属する浦和レッズで、エースナンバーの「9」を継承したのである。
ドリブルのキレ味は宇佐美や宮市らに見劣りせず、フィニッシャーとしての資質にも磨きをかけてきた。剥き出しの闘志がエゴではなくチームを刺激する方向へつながれば、代表でも貴重なオプションと成り得るだろう。
”本田を上回る才能”が国内復帰を果たした
ドリブラータイプではないが、期待の若手をあと二人紹介したい。
ひとり目は久保裕也だ。
18歳だった2012年2月に日本代表に初招集され、昨年夏からスイス1部リーグのヤングボーイズでプレーしている。リーグ戦で2位につけるクラブでは途中出場が多いものの、ここまで公式戦22試合出場で6ゴールは悪くない数字だ。左右両足を巧みに使いこなすことができ、攻撃のポジションを柔軟にこなすことができる。
システムにとらわれずにプレーできる久保がいれば、選手交代のバリエーションも豊富になる。2016年のリオ五輪を目ざすチームの主力格だが、今後のアピール次第で2年ぶりのフル代表入りが見えてくるかもしれない。
ふたり目は柴崎岳である。
久保と同じタイミングでザックに初招集を受けたこのミッドフィールダーも、若年層から期待と注目を集めてきた。所属する鹿島アントラーズでは、入団2年目の2012年シーズンからポジションをつかんでいる。
彼が定位置とするボランチでは、遠藤保仁(ガンバ大阪)と長谷部誠(ニュルンベルク/ドイツ)がザックの信頼を集める。彼ら2人を追いかけるのは、ドイツ・ブンデスリーガで実績を積む細貝萌(ヘルタ・ベルリン)や、ボール奪取能力に優れる山口蛍(セレッソ大阪)だ。人材豊富なポジションだが、柴崎が加わってもサプライズではない。才能に疑いの余地はないのだ。
新天地で復活を期す選手を、最後に紹介しておきたい。
大宮アルディージャの家長昭博だ。
ガンバ大阪の下部組織で本田圭佑と同級生だった27歳は、本田以上に将来を嘱望されていた選手である。前所属先のマジョルカ(スペイン)では本領を発揮できなかったものの、決定的な仕事のできるレフティーとしての評価は高い。U-20日本代表でともに仕事をした大熊清監督のもとで、このところ封印していた才能を存分に解放すれば──6月のブラジルも視界に入ってくるはずだ。