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キーワードは「1」 2014年の注目選手を追う

3月開幕の2014年シーズンへ向けて、J1リーグの各クラブが始動している。リーグ戦が中断していたドイツやオランダも、熱戦が再開されている。ブラジル・ワールドカップを控えて熱を帯びる日本代表のサバイバルを、シリーズでお伝えしていこう。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

日本代表・Jリーグガイド

キーワードは「1」

柿谷、大迫に続く「1」トップ候補は少なくない。

柿谷、大迫に続く「1」トップ候補は少なくない。

今シーズンのJリーグには、2014年の欧州各国リーグには、いつもと違う注目点がある。

ブラジル・ワールドカップへ向けた各選手のアピールだ。

最初のキーワードは「1」である。ザックことアルベルト・ザッケローニ監督の日本代表がベースとする4-2-3-1の布陣で、1トップをめぐる競争がどのように着地するのかは興味深い。

現時点で先行するのは、セレッソ大阪の柿谷曜一朗だ。昨年7月の東アジアカップで得点王に輝いた24歳は、ここからザックのファーストチョイスとなっていく。

最前線で巧みにボールを引き出す彼は、2列目の本田圭佑(ACミラン/イタリア)や香川真司(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)を生かすこともできる。ディフェンスラインの背後を突く動きも秀逸だ。柿谷の登場によって、攻撃に幅広さがもたらされたのである。

大迫勇也(23歳)もザックの信頼をつかんでいる。昨年11月のオランダ戦であげたゴールは、代表における存在感を一気に高めた。

今冬の移籍マーケットで、大迫はJリーグから海外へ飛び出した。高校卒業とともにプレーした鹿島アントラーズを離れ、ドイツ・ブンデスリーガ2部の1860ミュンヘン(ドイツ)の一員となったのだ。

アントラーズのユニホームを着ていれば、新シーズンもスタメンでピッチに立つことができる。チーム内の競争はあるとしても、19ゴールをあげた昨シーズンの実績は眩しい。

1860ミュンヘンでも即戦力として期待されているが、絶対的な存在ではない。1部昇格を目ざすチームに、大迫の爆発を辛抱強く待つ余裕もない。結果を残せなければ、チーム内の優先順位は下がってしまう。日本代表においては、柿谷に次ぐ2番手という現状からの後退を余儀なくされてしまう。

そうしたリスクを理解したうえで、大迫はドイツへ戦いの舞台を移した。2月8日から再開されるブンデスリーガ2部に注目だ。

異なる個性が危機を救う

ブラジル・ワールドカップ開幕まで残り4か月となったタイミングから、巻き返しを期す選手は誰か。

国内復帰にきっかけを求めたのは李忠成だ。

イングランド・プレミアリーグのサウサンプトンで所属機会に恵まれなかった28歳は、浦和レッズを新天地に選んだ。2011年のアジアカップ決勝で優勝を決めるゴールを決めた男は、かつての恩師であるミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもとで再浮上を期す。

継続的なアピールを誓うのは大久保嘉人(川崎フロンターレ)だ。

2010年の南アフリカ・ワールドカップに出場し、昨シーズンのJ1で得点王を射止めた31歳の実力は、ザックも十分に知るところである。1トップでも2列目でもプレーできる彼が加われば、攻撃のオプションはさらに増える。ところが、昨年は一度も代表に招集されなかった。

ザックの心を動かすには、結果を残し続けるしかない。3月開幕のJ1リーグでゴールを量産していけば、イタリア人指揮官もさすがに招集を検討するはずだ。ストライカーの選考基準では、「勢い」も重要な要素になるからである。

同じことは川又堅吾(アルビレックス新潟)にも言える。昨シーズンのJ1で大久保に次ぐ23得点を叩き出したが、ザックから声はかかっていない。

日本代表は2列目の人材が豊富だ。本田、香川、岡崎慎司(マインツ/ドイツ)、清武弘嗣(ニュルンベルク/ドイツ)らの攻撃力を生かすのは、勝利への前提条件である。ザックが理想とする1トップは、ゴール前の決定力と同じくらいに2列目を輝かせる役割も担う。本田や香川とのコンビネーションに優れる柿谷、前線で起点となって時間を作れる大迫が存在感を強めてきたのも、2列目との親和性が高いからに他ならない。

ザックの思い描く1トップ像に照らすと、川又がどこまでフィットするのかは未知数だ。

ハーフナー・マイク(26歳)と豊田陽平(28歳)も、川又と似たような立場にある。

どちらも長身を生かしたヘディングを武器とするが、2列目と密接な関係を作りながらの攻撃は実現していない。そのために必要なトライを、ザックもしてこなかった。

とはいえ、川又には野性的な迫力がある。身体ごとゴールへ飛び込むような泥臭さは、攻撃の閉塞感を打破する可能性を秘める。昨シーズン同様の結果を2014年も残していけば、攻撃の“ジョーカー”に浮上してくるかもしれない。

ハーフナーや豊田が生きる道もある。高さにはスランプがない。追いかける展開でパワープレーに活路を求めるなら、彼ら以上の人材はいない。

ザックが束ねるチームは、日本人が持つ繊細な技術と敏捷性を強みとしている。だからといって、高さを切り捨てる必要はない。それまでと違う個性の登場は、対戦相手をしばしば悩ませるものである。
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