災害が起きれば即対応
自治体に勤めている保健師は、災害が起きればすぐに対応することが求められます。皆さんの記憶に新しい東日本大震災では、けが人の救護から避難所の開設までひとり何役もこなし、何日も家に帰ることができないまま働きづめになった保健師がたくさんいました。そんなことは自治体職員なのだから当たり前の行為、といえばその通りです。でも、あの震災では、あまりに被害が大きく、広範囲で、どこからも応援がこない状態で、看護の知識をもった保健師に仕事が集中してしまったのです。もともと、平時でも保健師の数が足りていない状態だったので、あのような緊急時に充分対応できるはずがありません。多くの人たちが、倒れる寸前、いや、実際に倒れた人もいる状態で働きづめになりました。
あまりに悲惨な状況を目の当たりにしながらも必死に使命感だけで働き、やっと落ち着いた後にぽっかり心に穴があいたようになり、精神的な病気を引き起こす保健師もいました。それは数年経った今も同様で、突然、涙が止まらなくなるなどの症状を訴える人もいます。何から何まで保健師に仕事が集中したおかげで、身も心もボロボロになり、仕事が続けられなくなった方もいます。
また、応援が来たら来たで、受け入れ側の準備もしなければなりません。初回だけ指示をすれば理解してくれる応援ならいいのですが、何をしたらよいのかその都度聞いてきたり、案内や補助をして欲しいといいだす大名支援の団体もいたようで、対応に苦慮することも珍しくなかったといいます。*これについては別記事で触れることにします。
避難所対応の難しさ
災害時に開設される避難所管理も保健師の重要な仕事です。これは震災はもちろん、豪雨災害でもよくある問題で、- 被災者の受け入れや割り振り、
- 人数や性別、健康状態のチェック
- 床で眠れない人への対応→ケガ人、高齢者、障害者など
- トイレなどの衛生管理
- メンタル面のチェック
- 食事のこと
避難所管理も保健師の重要な仕事
こんな災害でも保健師の力が求められる
保健師が関わる災害はほかにもあります。例えば、2010年3月に宮崎県で起こった口蹄疫問題。牛の病気なので保健師は関係ないと思うかもしれませんが、牛の殺処分に全国からたくさんの獣医師、保健所職員が派遣され、朝から晩まで防疫業務に従事していました。その人たちの健康管理を行うことが、受け入れ側保健師の仕事になったのです。殺処分や消毒のための薬剤で皮膚疾患に悩まされる人、殺処分の家庭で牛に蹴られて大けがをする人。機密性の高い防護服を着て、汗だくの状態で働いているために熱中症症状が出る人など、作業員の健康管理をすることも保健師の役目でした。
また、家畜の大量殺処分にともない、経営者側(農家)の精神面をフォローすることも大きな役割で、近隣の精神科医と連携を取りながら農家への訪問をしていました。
被災地に派遣される場合も
自分の町が大丈夫でも、近隣、もしくは遠方の自治体に支援活動で派遣されるケースも多々あります。先に話題にした東日本大震災では、遠く沖縄県や高知県の保健師も東北に派遣されましたし、原発問題で避難者が集中した福島県いわき市には、長期に渡り現地滞在しながら支援活動を行う保健師が関西から派遣されていました。住民と共に健康維持と予防に力を注いだり、すくすくと育つ赤ちゃんを見守ったり、楽しくできる仕事もある一方、大規模災害が起これば大変な責任がのしかかる仕事であることをしっかり肝に銘じておくようにしてください。