「比較」による他人基準を脱することが大切
頑張って節約をしても、人によってはつい気持ちが折れることがあります。そのひとつのキッカケが他者との比較です。自分より多く所得がある、貯蓄が多い、そして自分と違い好きなように支出している等々……。所得格差を感じてしまう、数字的な背景もあります。厚生労働省が昨年10月に発表した「2011年・所得再分配調査」によると、当初所得(税金や社会保険料の支払いなどを考慮しない所得)を比較では、世帯主が35~39歳での世帯所得の格差を示すジニ係数が0.3358となり、前回調査(2008年)の0.2779から急伸しました。世帯主29歳以下のジニ係数も伸びています。つまり、若年層では世帯間格差が広がっているという実態を示しているのです。
しかし、家計管理にとって比較は多くの場合、プラスの影響を与えません。せっかく貯まる努力を始めても、比較が気持ちを後ろ向きにさせてしまうからです。ファイナンシャル・プランナーの八ツ井慶子さんも、それは不幸なことだと言います。
「お金の使い方は生き方です。だから、自分を知ること、自分の基準を持つことがとても大切です。他人と比較してストレスをためて、みんなが持っているからと、不必要なものを買って安心する。それは結局、他人基準。その人にとって決して、正しいお金の使い方ではありません」
また、他者と比較をしなくても、つい支出してしまう、そんな時代になっていることも無視できません。一歩を外に出れば、目にするものは商品広告ばかり。駅構内にまでショップがあふれ、コンビニに入れば挽きたてのコーヒーの香り。
「現代人はモノを買わせるための、五感に訴える情報シャワーの中で生きている。そう言っても過言ではありません。だからこそ、無駄遣いをせず、必要なものに支出するという意識をより高めることが家計ポイントになってきます」
では、そのためにはどうすべきか。八ツ井さんは、貯蓄できないという相談者には、お財布の中をきれいにするようアドバイスする、と言います。お札の向きを揃えて、たまっているレシートを取り出す。それは別に「おまじない」ではありません。
「つまりはお金を大事にする、ということです。給与明細も、数字はいつもと変わらなくても、毎回じっくり見てほしい。なぜなら、給与は自分が1カ月間頑張った証し。いわば、自分の分身なのです。すると、大事に使いたい、無駄にしたくはないという気持ちが芽生えます。それがすなわち幸せ家計を生み出す第一歩になると思います」
八ツ井慶子さん
ファイナンシャル・プランナー。大学卒業後大手信用金庫に入庫。本当にお客様にとっていいものを勧められる立場になりたいとの思いから、個人相談が中心のファイナンシャル・プランナーとして独立。近著に『ムダづかい女子が幸せになる38のルール』(かんき出版)と『サラリーマン家庭は"増税破産"する! 』(角川oneテーマ21)がある。テレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。All Aboutマネーのガイドを務める
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取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ パネルデザイン/引間良基