子育て事情/子育て事情関連情報

学術的な考察からひもとく「産後クライシス」(2ページ目)

産後クライシスのメカニズムと意味を説く「間違いだらけの産後クライシス論争」第2弾。過去の学術的研究も踏まえれば、産後クライシスとは、夫の無神経というような局所的な不都合から生じるものではなく、実はもっと複合的な問題であるといえる。「気付かない夫が悪い」というようなレベルの話に矮小化してしまえば、ますます家族の機能不全が増える。

執筆者:おおた としまさ

ストレスを感じたときの男性と女性の反応の違い

また、1990年にアメリカで、働く両親を対象に行われた調査では、次のようなことが報告された。
  • 父親の場合、同僚や上司と衝突した日に帰宅すると、いつもより子どもの相手をしなかった。ほとんどの場合、自室にこもってしまった。
  • 母親の場合は仕事でストレスを感じた日は帰宅してから子どもの相手をいつもよりよりよくすることがわかった。いつもより楽しく子どもの世話をしていた。
ストレスを感じたとき、男性は子育てから遠ざかり、女性は子育てに向かうのである。ということは、産後クライシスで、夫婦間の緊張が高まると、男性はますます子育てから遠ざかり、女性はますます子育てに向かうという作用が働くと考えられる。自然の采配により、夫婦の間の溝がますます深まるわけだ。

さらに、UCLAの心理学者シェリー・E・テイラーは、「女性は人に頼る方法でストレスに対処する傾向が男性より強い」と主張している。

これらをおおざっぱにつなげて考えると……
「産後クライシスのストレスで、女性はますます子育てに向かい、かつ、まわりの人に頼ろうとする。そのとき、夫は、逃走する」という構図だ。

昔はそれで良かった。子育ては夫婦というより、大家族や地域で行っていたから、妻のストレスは解消されやすかった。でも核家族において、女性が頼れるのは夫しかいない。しかし、産後クライシスの中で、男性が子育てに向かうということは、子育てから逃走したくなる本能に逆らう強い意志をもたなければならない。

……というようなことを、決して男性の肩をもつわけではなく、まずは予備知識として知っておいてほしい。

次回は、間違いだらけの「産後クライシス」論争第3弾として、「『産後クライシス』は夫婦関係の破綻を意味してはいない」と題して、産後クライシスに対する心構えを説明する。
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