住宅地愛にあふれた一冊
今回紹介する「神戸の住宅地物語」は、著者の「住宅地愛」がひしひしと伝わってくる本です。著者の大海 一雄(おおうみ かずお)氏。神戸市で市営住宅、神戸市住宅供給公社で分譲住宅を手がけ、日本初の輸入住宅村を建設。その後、大学教授等を歴任し現在は西神ニュータウン研究会代表世話人を務めるという「住宅地愛」にあふれた経歴の方です。この類いの本によくある外れパターンは「過去の文献や統計を再編集しただけのもの」。しかしこの「神戸の住宅地物語」は、文章を読んでいても、単なる参考文献をまとめ直しただけではない、著者の知見や思い入れがビンビンと届いてきます。ふんだんに使われている住宅地や団地、眺望の写真は、おそらく著者が実際にそれぞれの住宅地をくまなく歩いて自身で撮影したものだでしょう。
神戸はニュータウンな街
書かれている内容はバラエティーに富んでいます。住宅地の歴史、明治大正昭和期の特徴的な住宅地の紹介、団地やニュータウン、その人口の変遷からネーミング、神戸市内住宅地の特徴的な風景等、どこからでも読み進められます。なかでも多く紙面が割かれているのは、高級住宅街ではなく、団地/ニュータウンです。著者は「はじめに」の冒頭にこう記します。
こういわれると、神戸市の住宅地を語るにあたり、高級住宅街よりも団地/ニュータウンを語るのが本筋であると腑に落ちます。神戸市内58団地の一覧表、主要20団地の人口推移、団地名の変遷などを読むと、ある程度神戸市の地理に明るい方であっても「自分はこれほど神戸の事を知らなかったのか」と思うに違いありません。神戸には、計画的に開発された美しい郊外住宅地がたくさんあります。そしてここに住む人の数は、神戸市の全人口の約3分の1を占めています。このような大都市は、全国的にそうたくさんはありません。
こんな方にオススメ!
この本を読むと以下の効用があります。- 神戸の住宅地には、高級住宅街と団地/ニュータウン、二つの面がある事が理解できる
- 明治から昭和の「神戸住宅地の歴史」がわかる
- 街の面白い風景等の小ネタを仕込める