機動的に財政政策が立案されたが……
機動的な財政政策はどうでしょうか? 2本目の矢です。安倍政権が2012年12月26日に発足した後、2013年2月26日には、2012年度の補正予算が成立しました。10兆2815億円の規模でした。また、2013年10月1日に消費税率を5%から8%にアップすると発表した後、12月5日には2013年度の補正予算(5兆4956億円)を発表しています。確かに機動的な財政政策といえるでしょう。
では、その内容はどうでしょうか?
財政支出にはさまざまな種類のものがありますが、なかでも新たな産業の創出につながるような、日本経済の成長につながる積極的な財政支出に注目しています。3本目の矢である成長戦略に貢献するような財政政策といってもいいでしょう。
例えば、2012年度の補正予算を見ると復興・防災対策として3兆7889億円が措置されています。復興・防災は、とても大切な意義がありますが、経済効果としてみたときには、損なわれたインフラを元の状態に戻すことが主眼ですので、新たな産業の創出にはつながりにくいです。
それに対して、研究開発、イノベーション推進のための8914億円は、iPS細胞等を用いた再生医療という巨大な産業を生みだす可能性のある財政支出です。また、次世代自動車充電インフラ整備等省エネ・再エネ導入促進のための1165億円は、日本が世界に先駆けて自動車充電インフラ整備をし、これを世界の国々へ輸出できる可能性のあるものです。
財政支出をこのように成長戦略の観点から捉え直すと、案外(というかやっぱり?)、日本経済の成長のためには、あまりお金が使われていないことがわかります。
2013年度の当初予算は92兆円ほどですが、このうち成長戦略に使われているのはわずかで、多くは社会保障費(29兆円)や地方交付税交付金(16兆円)、防衛費(5兆円)、国債の償還(22兆円)などに使われています。成長戦略にまわすだけの予算がほとんどない、というのが正直なところでしょう。
しかし、その限られた予算枠のなかでも成長戦略に使われている支出はあります。そのひとつが、農地の大区画化など農林水産業の体質強化のための基盤整備等に使われる5793億円です。