チームワークが抜群にいい理由
保健師の職場は「女の園」になっていることが多いです。一般的に女性だらけの集団はいろいろ複雑だという話をよく聞きます。実際、私が取材してきた保健現場でも、そのような話を聞くことはありました。しかし、逆に素晴らしい話もたくさん見聞きしてきましたので、いくつかご紹介したいと思います。北海道のある大都市で感心したのは、若手保健師がのびのびと働いていることでした。組織や上下の壁が厚い自治体の中にあり珍しいことなのでよくよく観察していたところ、ベテラン保健師がとても細やかな気遣いで若手を育てていることが分かりました。何かにつけて若手はベテランに相談を持ちかけ、ときに職場で、ときに就業後の居酒屋でしっかり話を聞きアドバイスしていました。そして、いざという時は若手の盾になり、上司と掛け合ってくれるなど、とても親身な姿勢が絶大な信頼を得ていました。
後に先輩が異動し、別の部署に移ってもその関係は続いているようで、新しい課長が若手保健師に対して杓子定規な要求をしたときも、別の部署に移った先輩がわざわざ課長の元に来てお互いが譲歩できるような解決策を示しながら「この子のやる気を認めてあげてください」と直訴したこともあったといいます。もちろん、こんなフォローをしてもらうと若手も両者の顔を潰さないようしっかり働きますし、先輩への信頼度も上がります。ひいては職場全体の士気も上がります。
そのひと言が素晴らしい
秋田県のある市で出会ったベテラン保健師さんは、新人保健師に対して「根無し草になるな」という話をしていました。これは地域にしっかり根を張れという簡単な意味ではなく、もっともっと奥深いことでした。それは、保健師、とくに新人のうちはどうしても自分だけで地域の健康を守ろうとしてしまいます。自分が頑張れば何とかなると思い、自分の知識や経験を「教えよう」としてしまいますが、そうじゃない。まずは地域の人たちとしっかり交流を持ち、自分を可愛がってもらい(地域の人たちに)育ててもらう(教えてもらう)ことから始めよう。すると地域も自分も一緒に育っていける。しっかり根っこを生やし、活動していきなさいという意味でした。
この話を聞いたとき、とても感動した私です。もちろん、この市に入ったばかりの若手保健師さんも学生時代の実習で同様の話を聞き、感動して就職するなら絶対にここ! と決めて勉強したと話してくれました。とてもいい話だなと思います。
ちなみに、このベテラン保健師さんはとても穏やかで、話をしているととても心が落ち着きます。そして何に対しても「きっと理由があるのですよ」と、一方的な批判をしません。わずか30分話しただけで、人間性に惹かれました。
女の園だからこそ
高知県の中堅保健師さんは、後輩のまとめ方がとてもうまい人です。怒る時も誉める時もコソコソやらず、いつも堂々と皆の前で行います。そして後輩が何かに悩んでいれば「人と比べたらいかんよ」と元気づけ、仕事に忙殺されてる人に対しては「量を減らすことはできなくても工夫することはできるよ」と励ましています。失敗しても先輩がしっかりフォローしてくれます
「誉めるときも怒るときもいつもみんなの前で堂々と指摘してくれます。だから女性の職場にありがちな陰湿感もなく、素直に納得できるんです」
と、全面的な信頼をおいていたのが印象的でした。
また、Wさんはある講演のウケウリと断りを入れつつも、仕事に対してこんなことも話していました。
「大きなホームランばかり狙わず、小さなヒットを積み重ねていくことで気づいたら大きな変化が生まれている。イチローのようになれればいいなと思って私たちは働いています」
しっかりした考えを持った先輩がいれば、後輩は実力以上に伸びていくわけですね。
皆さんもこんな素敵な先輩たちに出会えるといいですね。よき先輩を持つことは自分も高めることにも繋がりますからね。