(理由2)売る判断が鈍る
次によくないことは「愛着がわいてきて、売るに売れない」「株主優待目当てなのだから売る気はない」という選択をつい行いがちだということです。投資は長い目で企業とつきあってほしいのですが、それでもダメな会社は手放すことも考えなければなりません。
業界が構造的不況に陥っているような場合に、「株主優待が欲しいから」といつまでも投資していたところ、株価はどんどん下がってしまう、ということがありえます。これもまさに本末転倒です。
会うときにいつも手土産を欠かさない人と、会うときにいつも手ぶらの人では、手土産をくれる人のほうに好印象を持つことでしょう。友人関係ならそれでもいいのですが、投資において「おみやげの有無」が冷静な判断を失わせていたらこれは問題です。
なお、株主優待の権利が得られる日だけ株を買って、権利落ちしたらすぐ売る、という人もいますが、こうした人も「買ったり売ったりの判断基準が偏っている」例だと思います。
(理由3)投資の成果を取り崩している
株主優待は配当とは異なりますが、会社の利益の中から「株主に還元」している部分です。そう考えると、投資で得られた収益の一部と考えることもできます。できれば投資で得られた収益は取り崩さずに再投資を続けたほうが資産は効率的に増えていきます。ところが、株主優待は使ってしまうものばかりですから、なかなか残りません。配当については証券口座に振り込まれる仕組みが整ってきたことで、新たな投資の資金に使われるようになってきました。しかし「株主優待で1000円分の商品をもらったから、その分節約できた1000円を証券口座に入金しよう」と考える人はあまりいません。
投資信託でタコ足分配(運用の値上がり部分ではなく、元本部分を解約すること)を行うと、良い商品ではないと考える人が多いのに、株主優待についてそう考える人は少ないようです。株主優待をもらったら、その分ぐらいは追加の入金をして別の会社に投資したり、同じ会社の株を買い増してみてはどうでしょうか。
きっかけとして、結果として、株主優待を楽しもう
とはいえ、私も「株主優待完全反対!」というほど頑ななスタンスではありません。株主優待は「おもしろい」「気持ちがいい」という部分は無視できないからです。投資に興味を持ったり、投資を楽しむアクセサリーとして、株主優待は悪いものではありません。投資初心者が初めて買う株が、結果として株主優待目当てであってもいいと思います。
株主優待にいつまでもこだわるのではなく、それをきっかけにして投資の世界に踏み込んで欲しいと思います。きっと、いろんなすぐれた企業が存在していることに気づくことと思いますよ。