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外傷性股関節脱臼の症状・原因・治療

外傷性股関節脱臼は、事故、運動、転落などで大きな力が股関節にかかることが原因で発生します。症状、診断法、治療法、治療後の注意点や合併症について解説します。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

 外傷性股関節脱臼とは

「外傷性股関節脱臼(がいしょうせいこかんせつだっきゅう)」とは難しい病名ですが、外傷が原因で股関節の脱臼(だっきゅう)が発生する病態です。股関節は骨盤と大腿骨を接続する関節です。大腿骨頭という球状の形をした骨が、骨盤の一部である寛骨臼(かんこつきゅう)というくぼんだ骨にはさまれた状態の関節です。

股関節

         股関節は骨盤と大腿骨を接続する関節です。


外傷性股関節脱臼の症状

患者さんは、脱臼した関節が動かせない状態となり、激痛、関節の腫脹、時間が経過すると皮下出血が発生します。

外傷性股関節脱臼の原因

転倒、転落、スポーツ、交通事故などで股関節が大きな力を受けた状態で発生します。バイクの事故が主たる原因となっています。

外傷性股関節脱臼の分類

■前方脱臼
大腿骨が前方に移動する脱臼。外傷性股関節脱臼の5%以下の珍しい脱臼です。

■後方脱臼
大腿骨が後方に移動する脱臼。外傷性股関節脱臼の95%以上を占める脱臼です。

外傷性股関節脱臼の診断

■単純X線(レントゲン)
X線

股関節単純X線像。大腿骨が後方向に脱臼しています。
骨盤の骨折を合併しています。


単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明をうけられるので、整形外科では必ず施行します。脱臼に骨折を合併することが多いので、合併する骨折の診断にも必要な検査です。

■MRI
MRIは磁気を使用して人体の断面写真を作成する医療用機器です。被爆がないのが最大の特徴です。欠点は費用が約1万円程度と高額な点、狭い部屋に15分間ほど閉じ込められて、騒音が強いことです。脳外科の術後で体内に金属が残っている人、心臓ペースメーカー装着の人、閉所恐怖症の人などではMRI検査が無理なので、CT検査を行います。CT検査の費用は5000円程度で、MRIより安くなりますが、被爆があります。骨以外の損傷を調べるにはMRIないしCTが必要となります。

MRI

MRI画像。骨だけでなく周辺の組織が正確に診断可能です。


外傷性股関節脱臼の治療法

■徒手整復法(医師が手で脱臼を直す手技)
入院および全身麻酔が必要となります。
X線

整復後の骨盤X線像。大腿骨と骨盤が正しい位置にもどっています。


•鎮痛薬
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬を使用します。

問題点は長期の服薬で胃腸症状、腎機能低下が高率に発生することです。急性期を過ぎたら主治医と相談し、減量ないし休薬を考えましょう。

■観血的整復固定術
脱臼骨折の場合、手術的な治療が必要となります。

整復

      骨折を整復し金属のネジで固定を行います。


■人工股関節置換術
骨固定で整復が難しい骨折、年齢的に治癒が期待できない骨折に対しては人工関節が使用されます。
股関節

                人工股関節。




外傷性股関節の合併症

■坐骨神経損傷
骨折のない脱臼では自然治癒することがほとんど。

■阻血性大腿骨頭壊死
脱臼を24時間以内に整復しないと大腿骨頭の壊死が高率に発生します。壊死の範囲が広い場合手術が必要となります。股関節脱臼は早期に治療が必要となります。
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