たった1日しか記憶が保てない少女・パコと
ダメダメな大人達の物語 『パコと魔法の絵本』
2004年、PARCO劇場を皮切りに全国8都市で上演された後藤ひろひと・作、G2・演出の舞台『MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人』。(伊藤英明さん、長谷川京子さんらが出演) 。 2008年、キャストを変えての再演に続き、『嫌われ松子の一生』の中島哲也監督が独自の解釈を加え、新たなタイトルで映画化されたのが『パコと魔法の絵本』です。
医師も患者も変人ばかりが集まる病院に入院している少女・パコ。入院患者の偏屈で他人を一切信用しない老人・大貫は、ある日彼女の事をライター泥棒と誤解して殴り付けます。翌日、大貫の手を取り「私、この手に触った事がある。」と微笑むパコ。実は彼女は、交通事故で両親を失い、自分は何とか助かったものの、その時頭に受けたショックの影響で1日しか記憶を保てない病気にかかっていたのです。
長編日本映画としては初めて3DのフルCGと実写を駆使し、美しい色彩で見事にファンタジーの世界を表現している本作。偏屈で嫌われ者の老人・大貫を演じる役所広司さんがパコ(アヤカ・ウィルソン)によって次第に心を開いていく様子には心が震えますし、元天才子役で今は自殺未遂を繰り返す患者・室町(妻夫木聡)や、変装と人を騙すことが大好きな医師・浅野(上川隆也)、ファンキー過ぎる看護師・タマ子(土屋アンナ)ら、多彩な出演者からも目が離せません。
果たして駄目な大人達はパコの大好きな絵本の登場人物になって芝居を上演し、彼女に最高の笑顔をプレゼントする事が出来るのか……?
日常の生活に疲れ、ちょっと心に元気がなくなっているな、なんて大人にこそお薦めしたいハートウォーミングな物語です。
監督:中島哲也
出演:役所広司 アヤカ・ウィルソン 妻夫木聡 土屋アンナ 阿部サダヲ
加瀬亮 小池栄子 劇団ひとり 山内圭哉 國村隼 上川隆也
2014年2月シアタークリエ公演『Paco パコと魔法の絵本』
そして2014年2月には『パコと魔法の絵本』が舞台劇として帰ってきます! パコを演じるのは注目の子役・谷花音ちゃんとキッド咲麗花ちゃん(Wキャスト)。 こちらも豪華なキャストの競演と、2004年の初演からずっと本作の演出を手掛けているG2さんにより、映画とは一味違った笑いと感動を客席に届けてくれる筈。All About演劇コンテンツでは開幕に向け、今後も取材を続けていきますのでお楽しみに!
『Paco ~パコと魔法の絵本~』
作:後藤ひろひと 演出:G2
出演:谷花音 キッド咲麗花 西岡徳馬 松下優也 安倍なつみ 伊礼彼方 上山竜司
川崎亜沙美 広岡由里子 マギー 山内圭哉 吉田栄作
2014年2月7日~2月25日(シアタークリエ) → 公式HP
心の闇、どうしようもない虚無感……果たしてその先に救いと赦しはあるのか
『その夜の侍』
堺雅人さんが渾身の演技を魅せる『その夜の侍』
小劇場界のみならず、最近は中劇場や大劇場の舞台にも精力的に作品を書き下ろし、俳優としても活躍中のTHE SHAMPOO HAT主宰・赤堀雅秋さん。『その夜の侍』は2007年に劇団THE SHAMPOO HATが下北沢ザ・スズナリで上演した同名の舞台作品を赤堀さん自身の脚本・監督により2012年に映画化した作品です。
5年前に妻を轢き逃げされて以来、その犯人に復讐する事だけを思い描き日々を生きている中年男・中村(堺雅人)。そして人を轢き殺してしまったにも拘わらず、全く罪の意識がないままに出所し、変わらず悪行を繰り返す木島(山田孝之)。
妻を失って以来、全く生気のない目でただ”生きている”堺さんの演技と、クズである事が自然過ぎて、もしかしたら自分が守っている規範や信じている常識の方がおかしいのではないかとグラグラしてしまう山田さんの鬼気迫る芝居。
下北沢のザ・スズナリで舞台版が上演された時と同じく、心がヒリヒリするような、胸の奥に重いものがどん、とつかえるような……そんな感覚に陥る映画。決してストレートにパワーチャージができるタイプの作品ではありませんが、「今」という時代の一部分を鈍い刃で切り取ったような『その夜の侍』。 敢えてこの”心が不安定にグラつく感覚”をお薦めしたいと思います。
脚本・監督:赤堀雅秋
出演:堺雅人 山田孝之 新井浩文 綾野剛 谷村美月 安藤サクラ 田口トモロヲ 他