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いまやカテゴリーと化した「タワーマンション」

高層階からの眺望や夜景、ランドマークとしてステイタス性(高い資産性)などから、さらなる人気に拍車がかかるタワーマンション。不動産経済研究所の調査によると、首都圏だけでも2013年以降、棟数で189棟、戸数換算で7万1692戸(2013年5月末現在)の高層マンション建設が計画されており(下表参照)、「デザイナーズマンション」や「コンパクトマンション」などと同様、「タワーマンション」が1つのカテゴリーとして完全に確立かつ定着したことを感じさせます。

しかし、近年、タワーマンションの乱立が時として訴訟の誘因となる事例が目立つようになっています。

たとえば、北海道札幌市では2004年、住友不動産が同市内に分譲した15階建てマンション「大通シティハウス」の13階および14階を契約した住民3人が、眺望をめぐり裁判を起こしました。原告が購入したマンションの完成からわずか2年後に、原告の住むマンション南側に同じ階数(15階建て)の新築マンション「シティハウス大通東」を、しかも同じ売り主である住友不動産が建設したためです。眺望が台無しになったとして、札幌地裁に訴えを起こしました。

このケースでは、「被告は眺望をセールスポイントとしてマンションを販売し、価格にも反映させていた。そして、原告が眺望を重要な購入動機としていたことも了解していた」。「にもかかわらず、被告が信義則上、その眺望を害さないよう配慮したと認めるに足る証拠はない」と認定し、札幌地裁は信義則違反による損害賠償責任として、被告に慰謝料225万円の支払いを命じました。

原告側の賠償請求金額は2060万円だったため、225万円に減額された点は気の毒に感じますが、勝訴判決を手にできたことは画期的といえます。

地響きとともに家屋が揺れるほどの風害により、住民は転居を余儀なくされる 

また、今後、増えるであろうと考えられる風害トラブルで、実際に次のような裁判が大阪府堺市でありました。

訴訟を提起したのは、12階建て1棟と20階建て2棟の3棟で構成されるマンションから20メートル東側に離れた近隣住民(2世帯6名)です。その被害状況は「当該マンションの建設によってゴーッとうなり声を立てながら“風の玉”が大砲のように家屋に当たり、地響きとともに家屋が揺れるほど」と判決文に描写されていました。洗濯物が飛ばされる程度では済まされず、屋根瓦や雨戸が飛散し、雨漏りを誘引するほどの強風だったそうです。

「家屋が倒壊するのではないかという恐怖心から生命身体に対する危機感が生まれ、不安感や恐怖感を抱くまでになった」ために、被害住民は住み続けることが困難となり、2000年6月に転居(売却)を余儀なくされました。そこで、一審の大阪地方裁判所(2001年11月判決)では精神的被害による慰謝料請求を認め、軍配は原告住民に上がりました。

風害は慰謝料請求の対象になり、自宅不動産の価格下落にもつながる/大阪高裁 

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タワーマンション乱立に比例して増加が懸念される「風害」被害

ところが、原告住民は「精神的苦痛」および「不動産価値の下落」による損害賠償を請求していたため、結果、後者である財産的損害については一審で棄却されてしまいました。通常、風害に関する因果関係の立証責任は地元住民が負うのが一般的とされており、不動産価値の下落の事実を認める証拠が見つけられなかったのです。

そこで、これを不服として原告住民は大阪高裁へ控訴。すると一転、二審では原告の主張が認められました(2003年10月判決)。

「控訴人ら(原告住民)に現実に生じた被害には看過しがたいものがあり、生活被害は本件マンションが存在するかぎり長期間継続すると思われる」。「そして、控訴人らの土地は住宅地であるから、住宅周辺における風環境が継続する場合、建物のみならず敷地の価値も下落するのが自然というべき」という理由です。

幸運にも、本裁判では原告住民が勝訴しましたが、風害に関する訴訟では原告が因果関係を証明できず、多くの場合、地元住民が泣き寝入りさせられてきています。風はその特性上、自然発生するものであり、法令上の制限を設けることは不可能と考えられているからです。

とはいえ、タワーマンション建設の勢いが続く限り、風害問題は必ず付きまといます。個人がその居住する居宅の内外において良好な風環境などの利益を享受することは、安全かつ平穏な日常生活を送るために欠かせない条件です。今後、再び起こるであろう風害訴訟を見越し、建築協定に関する指針(ガイドライン)を策定するなど、行政およびマンション業界による能動的なセーフティネットの構築を期待したいところです。

タワーマンションの完成(予定)計画

 

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