分譲、賃貸ともに供給は少なめ、
価格、家賃は古くなっていても高値保持
街全体としては分譲、賃貸ともに住宅の供給は非常に少ないエリアです。山手線沿線では有楽町、東京などに次ぐほど少なく、人気はあっても借りにくい、買えない地域とも言えます。というのは、原宿の場合、線路を挟んで西側は明治神宮、代々木公園になっているため、人が住める場所の多くが東側ということになり、そもそも民間で利用できる土地が少ないため。それに加えて明治以降、宅地化が進み、未利用の土地が少なかったという要因もあります。
以下、建物種別ごとに見ていきましょう。まずは分譲マンション。少し前に原宿警察署の建替えで登場した定期借地の大型マンションが話題になりましたが、今後、ああした共用施設の充実した大型物件がこのエリアで登場する可能性はあまり考えられず、供給があったとしても、大半は戸数50戸くらいまでの小規模な物件。間取りとしては30平米前後の単身向けの間取りから90平米近いファミリー向け、さらには100平米を越すような部屋もあり、間取りのバリエーションは比較的豊富。価格は数千万円から上は1億円オーバーまで。最近は最寄駅が原宿ではなく、都営大江戸線の北参道駅、つまり千駄ヶ谷に近いエリアの物件でぽつぽつ供給があるようです。
中古マンションは築50年近くから築数年くらいのものまで、年代的には幅がありますが、物件数は新築同様少なめ。しかも、古いから安くなっているかといえば、立地が良い分、値下がりは少なく、高値が保持されています。前述したコープオリンピアは築48年で120平米が1億8000万円と、一般的なファミリー向けが何戸も買えそうな価格のままですし、2000年前後に供給された60平米、70平米の物件でも6000~7000万円から1億円超も。立地が価格に占める割合の高さが実感できます。
こうした事情から目安となる価格を出すのは難しいのですが、築年数にこだわらず、非常にざっくり出すとすると単身者向けの30平米前後なら2000万円以上、ファミリーで60平米なら4000万円以上というところでしょう。
一戸建てでは新築はほとんどなく、中古が大半。こちらも1億円くらいからが最低ラインと考えておけば良いでしょう。
賃貸も同様に古くても、狭くても高いのが原宿。ひとり暮らしで考えるのであれば、最低でも7万5000円くらいの予算は必要です。相場で見るとワンルームマンションで12万円以上、2DKで20万円以上、3DKになると32万円以上となっており、かなり稼がないと原宿暮らしは難しいようです。また、100万円、200万円以上という高額物件も多く存在しています。
最近ではこのエリアでもシェアハウスが増えていますが、これも決して安くはなく、家賃でみると7万円、8万円~。これに光熱費などが入ると、住宅支出だけで10万円近くになる計算で、シェアハウスだから安いだろうと思うと大きな勘違いです。
駅前の更地がいよいよ開発される?
竹下通りでは商業施設建設相次ぐ
さて、最後に今後の原宿の動向について。残念ながら住宅の供給の話ではなく、商業施設です。まず、原宿駅の向かい、山手線沿いで長らく塩漬けになっていた旧コクド本社の土地が動き始めそうです。ここは実質西武グループの本社でもあった場所で2005年(平成17年)に売却され、商業ビル建設が予定されていましたが、その後、更地状態に。2013年(平成25年)6月に日経不動産マーケット情報がヨドバシカメラがこの土地を取得したとの情報を流しています。何が建つのかは現状分かっていませんが、原宿の中でも一等地だけに早々に動き出す可能性が高いものと思われます。
また、竹下通り沿いには三井不動産が新しく地下2階、地上3階の商業ビルを建設しており、2015年(平成27年)春にはオープンの予定。三越伊勢丹ホールディングスの「原宿アルタ」が主要テナントとして入居することが決まっていると報じられています。竹下通りには2013年6月にファッション・雑貨を主体とした商業施設キュートキューブ・ハラジュクも開業しており、大手資本進出が目につくところ。これまで個人資本の小規模店舗が多かったことから考えると、変化が起こりつつあるのかもしれません。
広大な土地でありながら、塩漬け状態が続いているのが、竹下通りと明治通りの角にあるパレフランス跡地。当初は2007年(平成19年)完成を目指して地上23階建ての商業ビルができるはずでしたが、もう何年も工事は中断したまま。どうなるのでしょう。
活気のある独特の雰囲気が人を呼ぶ街、原宿。賑わいだけでなく、駅西側に広がる代々木公園も住環境としては魅力的ですが、問題は家賃、住宅価格の高さ。もし、なんとかできるのであれば、一度住んでみたいものです。