ホットハッチにあらず、その走りはまるでアッパークラス
では、肝心の走りのイメージはどうだろうか……。まずは、エンジンをかけてみて、驚いた。やたらにうるさく吠えまくったからだ。外で聞くと、まるで猛獣が檻の中で不機嫌にうろついているかのようなアイドリング中のエグゾーストノートである。
その路線で、走りも、相当にやんちゃなのだろうか。
動き出して、すぐに、期待はいい意味で、裏切られた。とにかく、乗り味が重厚なのだ。ステアリングフィールはどっしりとしたセンター志向に終止。試しに車体を左右に振ってみると、シャープ過ぎず、鈍重でもなく、ちょうどいい加減で、クルマ全体が素直に塊となり、ハンドル操作に反応した。
アクセルペダルを軽く踏んで走らせているかぎり、そのライドフィールはスムース&フラットの典型で、心地よい硬さをキープする。何が何でもすばしっこくノーズが動く軽快さが身上のA250シュポルトとは、まったく違う走りのキャラである。
我慢しきれずに、オープンロードでアクセルペダルを思い切り踏み込んでみた。そのスタートダッシュは、まるで63モデル並みの迫力だ。豪快なエグゾーストノートをあたりにまき散らしながら、空気を切り裂いて加速する。フツウ、大パワーのFFコンパクトカーの加速といえば、エンジンとアクスルだけがぶっ飛んでいくような不安定さがあるけれども、A45AMGは違う。4マチックの強みというもので、前輪の空転を感知した瞬間に後へも駆動力が最大50%まで配分されるから、安定した加速を続けてくれた。しかも、劇的に、速い!
60km/h以上あたりの速度にのってくると、低速であれほど重厚だったハンドリングにも、自由自在さが加わった。トルクベクタリングも備わっているから、多少、ムリをしてコーナーに突っ込んでいっても、面白いように内を向いてくれる。AMGらしく、速く、そして質感高く走るために生まれたクルマだ。
もっとも、どこまで攻め込んでドライブしても、たいてい破綻なく乗り切ってくれるから、スリルに乏しい。面白さという点では、FRのC63AMGにとうてい及ばない。
結論をいえば、これは、ホットハッチなんかではなかった。AMGとしても、初のFFベースということもあり、かなり真面目に、遊ばず作り上げたのだろう。遊びの要素がたっぷりとあるC63より、その乗り味は大きなクラスのAMGモデルに近いものだった。