「おたから」として有名な日本の発光切手
発光切手とは、透明な発光塗料を切手上に印刷し、特殊な光線を当てて蛍光・残光反応するように製造した切手の総称です。1960年代には切手で郵便物の検知や区分を行うための技術としてドイツ、アメリカ、フランスなど、様々な国で発光切手が使用されました。また偽造防止のために、蛍光塗料で管理番号や独特な模様を印刷した国もあります。プレミアがついたことで有名な日本最初の発光切手。1966年7月から主に埼玉県内で発売され、発光切手の実用実験が行われた。(参考価格2,000円)
発光切手を観察するには
日本の発光切手(1966年)を観察するときに、もっともよいのは市販の「殺菌灯」です。ただし目に有害な光線なので、必ずサングラスで目を保護し、ごく短時間の観察に止めたいところです。店内装飾や水族館の演出などで使われるブラックライトでも、ある程度は観察できます。ブラックライトは、家電量販店で入手できる1500円くらいのハンディタイプが一般的ですが、小型のペンライトタイプも見かけます。
発光切手の観察だけでなく、切手のタイプ分類や真贋鑑定にも使えることがあり、手頃なものを1つ所持しておくと便利です。たとえば、こちらは昭和56(1981)年に発光されたツバキ30円切手なのですが、製造時期によって用紙や黄色のインクの成分が異なることが観察できます。日本の発光切手の現在
現在、日本では一部の高額面の切手に発光検知技術を使った特殊加工が行われています。発光塗料を使う理由の詳細は分かりませんが、偽造切手の防止とともに特殊扱いの郵便物を選別するためだと考えられています。昭和49年発行の500円切手と、額面部分などの一部デザインが変更された平成24(2012)年の500円切手にブラックライトを照射したものがこちらです。新しい500円切手には枠状に発光塗料が印刷されていることが分かります。特筆すべきは平成21年に発行された恵喜童子300円切手ではないでしょうか。ブラックライトをかざすと、郵便マーク(〒)を型抜きするように印刷している様子が分かります。
ファンサービスとしての発光切手への変化
もともと郵便作業の効率化や、切手の偽造防止のために利用されてきた発光切手の技術ですが、1980年代の終わり頃から少しずつ様子が変わっていきます。世界中で切手収集家へのファンサービスと思われる発光切手が多く発行されるようになったのです。その先駆け的な存在が1987年から1988年頃に登場した香港の普通切手です。エリザベス2世の切手にブラックライトを照射すると、香港の文字が浮かび上がります。美しいシークレットプリントの世界
このようにブラックライトをかざすと、美しい模様が浮かび上がる発光切手のことを特にシークレットプリントと呼んで専門収集するコレクターもいます。切手の図案を説明する文章が浮かび上がったり、切手図案と組み合わせることで面白い表現効果が出たりするものもあります。こちらのフィンランドの2008年発行の花火切手ですが、右に示すようにブラックライトを照射すると、美しい水玉模様が浮かびあがります。カナダの高額面切手には、ユーモラスなシークレットプリントを持つものもあります。このクジラ切手にブラックライトを照射すると、クジラの大きさを示すために、ダイバーの大きさが示されるという仕掛けになっていますし、波を表す黄色い線にはマイクロ文字が施されています。
なんとジョン・レノンのシークレットプリントも登場!
シークレットプリントの極めつけはこちらではないでしょうか。アイスランドで2008年に発行されたピース・イマジン・タワーの切手なのですが、ブラックライトを照射すると、なんとジョン・レノンの似顔絵が浮かび上がるのです。2007年に首都レイキャビクの沖合の島に世界平和を祈念するモニュメントが建てられたことを記念したものなのですが、これが発行された時には「やられた感」がありました。シークレットプリント実施確認国について
現在までに以下の国々でシークレット・プリントの切手を発行しています。収集家の多い先進国が話題づくりを意識しながら発行した例もあれば、自国のことをもっとPRしたいと考える経済発展著しい新興国や外貨獲得のための切手発行をする小国など、切手発行をめぐるさまざまな思惑も見えてくるようです。筆者の個人的なオススメは2000年代以降の中華人民共和国です。著名な音楽家の切手にブラックライトをかざすと、楽譜が浮かびあがってきますし、管理番号も印刷されています。他にも地図が浮かび上がったり、新たな漢字が出てきたりと、なかなか楽しいシークレットプリントを持つ切手が多数発行されています。
次に挙げる国と地域(*)が、確認されているシークレットプリントの実施国ではありますが、まだ未知のシークレットプリントのある切手があるかもしれませんし、今後さらに増えていく可能性もあり、これからの世界各国の切手発行が注目されます。
(*)アイスランド・アメリカ・アラブ首長国連邦・アルゼンチン・アルバニア・イギリス・イラク・ウガンダ・ウクライナ・エクアドル・エストニア・オーストリア・オーストラリア・オーランド・カタール・カナダ・カメルーン・韓国・クリスマス島・クロアチア・ケニア・国連・コートジボワール・スウェーデン・シンガポール・スペイン・セネガル・タイ・タンザニア・中国・中国澳門・トーゴ・ナミビア・ニカラグア・日本・ニュージーランド・ネパール・ノルウェー・バルバドス・バーレーン・ハンガリー・フィンランド・仏領ポリネシア・ブラジル・ブルネイ・ベラルーシ・香港・ホンジュラス・マレーシア・メキシコ・レバノン・ロシア