今回は久々に都市型狭小住宅についてのお話です。都市型住宅の建築では多くの場合、狭い土地を有効活用していかに住みやすくするか、ということが課題となります。その課題解消のために、よく用いられる解決策が「段差」を設けることです。これにより、家族の居場所を作り出すことや収納量の拡大などが可能になるのですが、一方で「バリアフリー化」という考え方からは離れてしまいがちです。そのあたりの現状や工夫のあり方などについて、先日私が見学してきたある都市型狭小住宅を参考に、詳しく紹介したいと思います。

自然が感じられる都市型狭小3階建て住宅

1階の主寝室

1階の主寝室。奥にあるタタミスペースの下は大容量の収納がある。タタミスペースでぼんやりとした時間を過ごすなど様々な利用ができることから、もはや「主寝室」とは呼べない空間といえるかもしれない(クリックすると拡大します)

旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)「街かどヘーベルハウス」という取り組みを行っています。これは住宅地の中の土地を購入しそこに建物を建て、しばらくモデルハウスとして活用した後、購入希望者に売却するものです。名称は異なりますが、旭化成ホームズだけでなく最近は他のハウスメーカーでも取り組んでいる新たなモデルハウスのスタイル。それぞれの会社の考え方がよくわかる建物です。

先日私が見学してきたのは「街かどヘーベルハウス大宮東町」(大宮市)です。同社は「しぜんごこちの家」という、自然が感じられる居心地の良い住宅づくりに力を入れており、その3階建てバージョンです。「五更観月(ごこうかんげつ)の家」という個性的なネーミングが付けられています。

概要は以下の通りです。
・延べ床面積132.17平方メートル(39.98坪)
・1階36.9平方メートル、2階53.58平方メートル、3階41.6平方メートル
・建築面積59.72平方メートル(18.06坪)

要するに、都市部に良くある典型的な狭小敷地に建つ3階建て住宅です。

1階は玄関と主寝室(7.2帖)、洗面所&浴室、トイレで構成。2階は「移ろ居(い)の間」と呼ばれるLDK(19.4帖)とそれに隣接するタタミスペース(5.2帖)となっています。3階は子どものスペースとなり、「ひとりの間」(個室、3.8帖と4.0帖)と「あいの間」(共有の勉強部屋、3.9帖)、さらに「白の間」「月の間」という空間が設けられています。

「白の間」は特に使い道が決まっていない空間で、「月の間」というのはいわゆるテラスを利用したデッキがある場所です。ここまで読んで頂いてわかるように、2階以外はどちらかというとこじんまりした空間が連なる建物です。

各階には段差を利用した工夫がいっぱい

さて、この建物の特徴は各フロアに段差が沢山あることです。まず、1階の主寝室から見ていきましょう。ここは二つのコーナーに分かれていて、まずソファーのあるスペースと、その奥に段差で一段高い位置にタタミのスペースがあります。

2階の和室

2階のリビングから見た和室の様子。和室の前にも家族の居場所になる段差があり、ここも家族それぞれが思い思いに過ごせる場所となる(クリックすると拡大します)

夫婦はここで布団を敷いて寝起きするというかたちになります。子どもが幼い頃なら、ここで家族みんなで川の字就寝することが考えられますし、子どもが大きくなって3階の部屋で就寝し、夫婦も別々に就寝したい場合は、ソファーのあるスペースにベッドを置くことで、「夫婦別寝」にも対応できます。

また、ソファーとタタミスペースにそれぞれが腰掛けることで夫婦の語らいの場になります。タタミスペースがあることで、時には一人で寝転がって考え事をすることも可能です。さらにタタミスペースは段差になっていますから、タタミを外すとその下には大容量の収納スペースが表れます。決して広い空間ですが、これだけのアイデアが詰まっているのです。

2階を見てみましょう。キッチンは今はやりの対面型キッチンではなく、壁据え付け型の従来よく採用されていたスタイルのキッチンです。対面型キッチンというのは、背面の食器棚と前面のシンクやコンロがついたカウンター、さらにはその間にある作業スペースと大変大きなスペースを使います。

一方、壁据え付け型のキッチンはカウンターと作業スペースだけですから省スペースです。実は狭小住宅の場合、こちらの方が空間利用上有利だといえます。この建物では、二つあるダイニングテーブルに工夫を凝らしていて、一つを作業台として使えるよう、高さを変えられるようにしていました。

次のページも、まず2階の空間利用から見ていきます。