長い長い前段取り
カーペットの生産は、糸が工場に入ってきてすぐに織れるわけではなく、非常に長い前段取りがあって、初めて製織がはじまります。一番最初に織機の全貌をご紹介しておきます。巾10m、長さ15mほどもある大きな織機です。この織機で、ホテルのカーペットや、住宅に使われているカーペットが生産されています。
それでは、工場見学に参りましょう。
ウール紡績編の記事でご紹介した紡績、撚糸、染色という工程を経て、「かせ」と呼ばれる糸の固まりがカーペットの工場に入荷されてきます。
かせ(一つのかたまりでおおよそ4kg、カーペットにするとわずか2平方メートル程度しかありません)
この「かせ」のままではカーペットの生産はできず、一番最初の工程「ワインダー」という工程に入っていきます。
ワインダーとは簡単にいうと、くるくると「木管」と呼ばれる芯に糸を巻き上げて、「コマ」をつくっていきます。この「コマ」は少なくとも1200本、多い場合にには6000本も準備をするのが、ワインダー工程になります。
まだまだ前段取りは続きます。
今度はこの「コマ」を織機の後ろ側にある「クリール」というところに一つ一つ手作業でつけていきます。前に織った時の糸が残っているため、糸に新しい「コマ」を結んでいきます。前でご説明したように、最低でも1200個の「コマ」がありますので、それをすべてつけていきます。生産している途中に結んだ箇所がほどけないように、丁寧に結んでいく必要があり、すべての「コマ」を交換するのにおよそ20時間程度かかります。
この他にも、生産しやすくするために、「シズ」と呼ばれるおもりを調整したり、「地」や「シメ」というカーペットの表面には出てこない糸の段取り、様々な前段取りがあり、実際に生産をはじめるまでにおよそ2週間程度かけて準備を進めていきます。
次のページでは、いよいよ実際に織る様子をご紹介します。