前ページで、ペイントした色壁のある生活を送るまでの全ステップが把握できたところで、具体的にステップバイステップで検証していきましょう。まずは、ステップ1の「一緒に住んでいる人達の同意を得る」から。色を塗った壁の例もとに、みていきましょう。
1.一緒に住んでいる人達の同意を得る
壁に色を塗りたいと思っても、なかなか一緒に住んでいる人の同意をえられない理由としてよく挙がるのが「ペンキはシンナーくさい」「垂れるし、ムラができるのではないか?」「白い壁が一番」という意見があります。そこからまずは検討してみましょう。・塗料は〈壁紙の上から塗れる、水性アクリルペイント〉を選ぶ
塗料には油性と水性があります。塗装工事特有のシンナー系のにおいがするのは油性で、屋外の防水機能の為に使われます。屋内なら水性で十分です。洗面所には艶のあるタイプをお勧めします(艶のある方が耐水性があるため)。
また、水性塗料はマッタリとしてローラーについて垂れにくく、二度塗りすることでほとんどムラなく塗る事ができます。またハケや筆を水で洗えるので、道具のメンテナンスも簡単です。
・そもそも誰にとって「白が一番」なのでしょうか?
「白い壁が一番空間を広く見せるから、色を塗ったら狭くなるのでは?」ですとか、「暗くなるのでは?」という心配の声を耳にします。そもそも「広くて明るい」ことは、誰にとっても一番いいインテリアなのでしょうか?そのインテリアで過ごす時間の長い方が、どのような時に「おうちが一番」と心から寛ぐのかによっては、色を有効に使う事もできます。
例えば下の写真のリビングは、朝日は入るものの日中からは日陰になるため、お昼から照明をつける必要がある立地条件でした。ご主人様はお仕事で平日は不在がちで、日中は奥様がお一人で過ごされることの多いご家庭でした。
ペイント前のリビングの様子
壁を一段階暗くしたことで、庭の明るさに視線がいくので空間に奥行きがうまれます。また柔らかな間接照明は人の表情を美しく演出してくれます。休日にくつろぐ長年連れ添ったパートナーの新しい表情に驚くこともあるかもしれません。
ペイントした後のリビングの様子/ FARROW&BALL no.246 CINDER ROSE
・見慣れたアイテムや日常風景もドラマチックに
ペイントした壁は空間にメリハリをつけて、見せたい箇所に視線がいくように演出する事が可能です。例えばお子さんのいるご家庭であれば、散らかりがちな床でなく、綺麗に並べた本棚や、アートにインテリアのポイントを合わせることで空間に奥行きを感じさせる事も可能です。色が加わることで、日常の風景も「絵本のような風景」になります。
アクセントカラーに〈フレーム〉のように映える、白い収納棚/FARROW&BALL no. 268 CHARLOTTE'S LOCKS
日常の何気ない風景が、思い出になるのなら素敵な方がいいですよね/Hip no.7024D Golden Horn
白といっても、青に寄ったもの、黄色を感じさせるもの、グレーがかった色があり、艶のあるものや石灰質のもの、漆喰など素材も様々です。
下の写真は、塗装用壁紙(カラーワークスペーパー)にローラーで塗れるタイプの漆喰を塗ったものです。静かな奥行きのある白い空間が広がっています。
設計/一級建築士事務所TADS 塚原 光顕 カメラマン/AILA CREATIVE 牧野 孝彦 写真提供/カラーワークス