記録づくめの田中将大。クライマックス・シリーズのピッチングにがぜん注目が集まる
楽天の野村元監督が「マーくん、神の子、不思議な子」と評したが、今年の田中はその「神の領域」をさらに広げたようだ
規定投球回以上でシーズン無敗は、1981年の日本ハム・間柴茂有(15勝)に次いで32年ぶり4人目だが、20勝以上で「無敗の最多勝投手」は田中がプロ野球史上初となった。また、24勝は1978年の近鉄・鈴木啓示(25勝)以来35年ぶり、1人で貯金24は1961年の西鉄・稲尾和久の28(42勝14敗)以来52年ぶり6人目(8度目)である。そして、3年連続防御率1点台(2011年から1.27→1.87→1.27)は、2リーグ制(1950年)以降6人目で、パ・リーグでは1956年から59年の稲尾和久(4年連続)、2007年から11年の日本ハム・ダルビッシュ有(5年連続)に次いで3人目になった。
「うれしいです。自分でもびっくり。毎年、シーズンが始まる前に全部勝つんだという気持ちでやっていますが、ここまで来られるとは思っていなかった。1試合1試合、集中して臨んだ結果です」
24勝までの道のりは、もちろん、平坦ではなかった。「短いイニングを全力で投げた後、(次の登板で)長い回を投げるのは難しい」と振り返る。
今年の球宴第1戦で2回を全力で投げ、フォームのバランスを崩した。球宴明け初先発となった7月26日のロッテ戦(Kスタ宮城)は、九回、0対2からサヨナラ勝ちで救われた。優勝を決めた9月26日の西武戦(西武ドーム)で九回にリリーフして初セーブを挙げたが、10月1日の日本ハム戦(札幌ドーム)で6回2失点と苦しんだ。
いずれも打線の援護で助かったが、実はこれも田中の投球に起因する。今季、田中の1試合平均の球数は106球(28試合で2981球)。この球数の少なさが、投球のリズム、テンポを生み、スムーズに攻撃に入れる打者のリズムを引き出したのだ。
今季の田中のキーワードは、「平常心」「我慢」「ギアチェンジ」だろう。どんな場面でも平常心を失わず、たとえリードされていても(味方の援護がなくても)我慢し、ここという時「ピンチ」にギアをワンランク上げる。この若きエースを星野監督は「アンビリーバブル。私のような並の投手が彼を表する言葉はありません。神の領域と言われても不思議ではない」とまで称賛した。
楽天の野村元監督が「マーくん、神の子、不思議な子」と評したが、今年はその神の領域をさらに広げた感のある田中。迎えるクライマックス・シリーズは、果たしてどういうピッチングを我々に見せてくれるのか。それこそ「神のみぞ知る」である。