沈静色緑は
健康、美容の基本、快眠を誘う色
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グリーンを基調にまとめられた子どもの寝室。色には人の意欲を刺激したり、落ち着かせたりするなど様々な効果があるといわれている |
緑にはその色自体に人間を沈静化させる効果があります。色の分類のひとつに興奮色、沈静色という分け方がありますが、緑や深みのある青はそのうちの、気持ちを落ち着かせ、集中力を高める沈静色と呼ばれる色なのです。寝室に緑、青がお勧めと言われるのはそのためで、ここに興奮色と呼ばれる、人間の神経を高ぶらせ、緊張させる色を配すると寝つきが悪くなることもあります。その興奮色の代表は赤やオレンジ、黄色といった暖色系で鮮やかな色。いくら赤や派手なピンク色が好きでも寝室には避けたほうが無難です。
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文京区小石川にある播磨坂。戦後に植えられた桜並木がいまや名所となり、坂の途中にはしゃれた店やハイグレードなマンションが。緑が地域のイメージを作ったともいえる |
ところで、緑色を見ると人間の脳内ではアルファ波と呼ばれる電気的な信号が流れ始めます。アルファ波が流れると、次に登場するのは人間の緊張をほぐし、ストレス軽減に大きな役割を持つというβ-エンドルフィンというホルモンです。このホルモンが分泌されることで私たちはリラックスした気分になり、筋肉の緊張がほぐれ、血圧が下がり……と次第に気持ちよく眠りに誘われていきます。また、このホルモンには、体の免疫力を高めたり、幸せな気持ちにさせてくれるなどの効果もあり、日々の疲れを癒してくれるものといえます。
緑は空気をキレイにし、
湿度や温度までコントロールしてくれる
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夏に都心から離れ、緑の多い場所に行くと温度が下がって快適に感じることがあるが、あれは感じるだけでなく実際に温度が下がっている結果だ |
次は植物としての緑の効果です。温暖化が叫ばれる現在、住み心地に大きく影響するのは植物に湿度や温度などを調節してくれる力があるということでしょう。もっとも分かりやすいのはヒートアイランド現象と緑被率の関係。緑被率とはある地域または地区における緑地(被)面積が全体に占める割合のことで、平面的な緑の量を意味しています。ただ、自治体ごとにどの緑をカウントするかなどの調査手法、名称などが異なることもあります。いずれにしても、どのくらいの緑があるかのデータというわけですが、この緑被率が30%を下回るとヒートアイランド現象が起こりやすくなるといわれています。具体的に言えば、緑が少ない場所では熱帯夜が増えて寝苦しくなり、ゲリラ豪雨に襲われやすくなるというわけです。
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首都圏ではどの自治体でも緑の減少に歯止めをかける施策を打ち出しており、減ってきた緑が少しずつ復活している |
ちなみに東京では平成19年の杉並区の資料によると、もっとも緑の豊富な練馬区が26.1%で、続いて世田谷区24.0%、杉並区21.8%などとなっており、少ないほうでは荒川区7.3%、台東区8.4%、中央区9.1%など。これを熱帯夜、真夏日の日数で比較してみると2004年7月20日~9月30日の間に真夏日が杉並区で16日だったのに対し、荒川区では24日、熱帯夜が杉並区で20日、中央区で35日などとなっており、緑が少ない街は暑いっ!ということが分かります(東京都環境科学研究所調べ。
東京都ヒートアイランド対策ガイドライン概要版より)。
寝苦しい夜が続けば、当然、疲労は蓄積しますし、集中力は低下、理由もなくイライラ、不機嫌になることもあるでしょう。健康や美容はもちろん、夫婦仲や子どもの場合には成績にも良くないというわけです。植物にはこのほか、有害物質を除去、浄化する作用やマイナスイオンを発生する作用なども知られていますが、いずれも人間の暮らす環境をより良くしてくれるものといえるでしょう。
続いて次のページでは緑と住みやすさの関係を見ていきましょう。