吉本ばななさん原作の青春映画
■作品名『つぐみ』
■監督
市川準
■原作
吉本ばなな
■出演
牧瀬里穂(つぐみ)、中嶋朋子(まりあ)、真田広之(恭一)
■おすすめの理由
伊豆半島の南端に近い松崎町は山が迫る町で、江戸時代に活躍した鏝絵の名工、「波の長八」を生んだ地です。海の香りとなまこ壁、石造りの橋が美しい町です。これだけで、情景が浮かんできます。
長八美術館に赴任してきた学芸員の高橋恭一も暮らしてみたいと思っていた町、松崎は主人公のつぐみを生んだ町でもあります。老舗旅館の次女つぐみは生まれつき体が弱く、わがままに育てられました。『つぐみ』はある夏の日々、つぐみを囲ぐる人たちの想いが描かれています。
もの心が付いた時にはすでに病院通いや入院を繰り返しに開き直ったつぐみは、意地悪で、粗野で、甘ったれで、ずる賢い少女になって行き、はけ口は家族たちに向けられます。こどもの頃から一緒に育った従妹のまりあにも向けられました。ケンカの後にまりあの勉強机の前には半紙が貼られていて、『ぶす』と墨痕鮮やかに力強く書かれていました。
そんな、つぐみの前に現れた恭一に心を奪われます。恋愛映画ではなく、恋愛の絡んだ青春映画です。本作で主演映画2作目となった牧瀬里穂は、本作品で毎日映画コンクール新人賞など各映画賞を受賞しました。
生死をさ迷い、弱気になったつぐみから手紙が送られてきます。バイト先に掛けられた電話。電話向こうのつぐみの言葉に救われます。そして、小道具の役割りで固定電話に託される割合が多い時代の映画は素敵に思えます。