堤真一さんの鬼気迫る演技には思わず息をのむ
■作品名『39・刑法第三十九条』
■監督
森田芳光
■出演
鈴木京香、堤真一、吉田日出子、杉浦直樹、岸部一徳、山本未來、勝村政信、國村隼、樹木希林、江守徹
「心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」
……刑法第39条のあり方について、真っ向から疑問を提起した作品です。
■あらすじ
夫婦がともに刃物で殺害されるという事件が発生し、劇団員の柴田真樹(堤真一)が容疑者として逮捕される。殺害そのものは認めたものの、事件当時の記憶がないという柴田。彼の精神鑑定を行った藤代教授(杉浦直樹)は、多重人格による心神喪失という診断を下す。しかし、被告人の精神障害は「詐病」である直感した教授の助手・小川香深(鈴木京香)は、独自の調査を進めていく……。
この作品、登場人物がみんな「普通」じゃありません。
冒頭で精神安定剤?を服用している香深も、夫の死後、精神を病んでしまった香深の母(吉田日出子)も、藤代教授も、刑事(岸部一徳)も、柴田の恋人・美可子(山本未来)も……。
調査によって、柴田の本名が工藤啓輔であること、借金の取り立てに追われている砂岡(勝村政信)という男が工藤として生活し、美可子と偽装結婚までしていること、本物の柴田はどうやらすでに死んでいるらしいことなどがわかってきます。
そして、工藤は中学時代、幼い妹を幼児性愛者の少年に強姦され殺されていること、その少年が精神障害を理由に無罪になっていること、妻とともに刃物で刺されて死んだ畑田(入江雅人)が犯人の少年であったことなども……。
詐病を装う人間を演じるというのは、なかなか難しい役どころなのではないかと思いますが、堤真一さんの鬼気迫る演技には思わず息をのむほど。
最後には、罪を犯した者と罪を許した法を憎み続け、人生のすべてを復讐に捧げた工藤だけが唯一、普通の人であったのではないかとすら思えてきます。
題材も重いのですが、映像そのものや効果音も重苦しく、2時間強でぐったり疲れる作品です。
心身が疲れているときは避け、体調の良いときに鑑賞するのがお勧めです。