糖尿病/糖尿病対策の生活・運動療法

野菜と果物の「色」にはいろいろな意味がある

実りの秋です。カラフルな夏野菜をたっぷりと召し上がった皆さんは、秋の果物を楽しんでいることでしょう。このところ、糖尿病関連の食事の話題は糖質制限食に集まっていますが、13年前は5-A-Day運動がWHOの提唱で始まって、ヘルシーな野菜と果物が改めて注目されていました。これは生活習慣病予防のために、野菜や果物を1皿80gずつ1日に5皿(計400g)は食べようという運動です。

執筆者:河合 勝幸

野菜

私の夏の朝は菜園の収穫から始まります。もちろん、食べきれませんから冬に備えてせっせと冷凍保存です。

実りの秋です。カラフルな夏野菜をたっぷりと召し上がった皆さんは、秋の果物を楽しんでいることでしょう。このところ、糖尿病関連の食事の話題は糖質制限食に集まっていますが、13年前は5-A-Day運動がWHOの提唱で始まって、ヘルシーな野菜と果物が改めて注目されていました。これは生活習慣病予防のために、野菜や果物を1皿80gずつ1日に5皿(計400g)は食べようという運動です。

糖尿病食事療法においては血糖の元になる炭水化物(糖質)を管理しようという考えは正しいのですが、昨今の風潮のように糖質0(ゼロ)をうたい文句にして目の敵にするのは明らかに誤りです。なぜなら、野菜、果物、牛乳は穀類と共に代表的な炭水化物食品だからです。野菜と果物が健康にいいのは疑いもありませんが、エキスパートは野菜と果物をどれだけ食べたかということだけでなく、そのバラエティにも関心を向けるようにアドバイスしています。これにも相反する意見があって、米国の5-A-Dayプログラムでは1日に4つのグループから選んだ、がん、心臓病、その他の重い疾病のリスクを減らす“強力な野菜と果物”をもっと頻繁に食べるように勧めています。

4つの強力な野菜と果物とは濃緑色の葉物野菜、黄色・オレンジ色の野菜と果物、アブラナ科の野菜そしてかんきつ類(ミカンなど)です。一方で、強力な野菜と果物を特別に考えることに反対するエキスパートもいます。全ての農産物は健康を増進させるファイトケミカルを多く含んでいるのだから、多種類の野菜と果物で良しとします。

強力な野菜と果物のアドバイスが魅力的なのは、現代人が好きなどこにでもあるアイスバーグレタス(普通の淡色の玉レタス)やポテト、コーン、リンゴ、バナナなどを一日5皿食べても健康への最善の効果を得るには不十分だからです。少なくとも一日一皿は“強力な野菜と果物”から取るように勧められています。

もう一つの簡単に十分な栄養素を取れる方法は、野菜と果物を色によって5グループに分けて、毎日5色の野菜と果物を取ろうという提案です。青/紫黄/オレンジの5色です。この内、赤/紫/青はアントシアニン系の色ですから1つのグループと考えていいでしょう。


赤/紫/青

アントシアニンという色素は、野菜や果物を赤・紫・青に染めます。ブルーベリーの青、赤キャベツやチェリーの赤や紫などでおなじみですが、体の中で強い抗酸化力を発揮します。心臓や記憶力を健康に保ち、眼病の黄斑浮腫、あるタイプのがん、脳卒中のリスクを下げるという研究結果もあります。いろいろな野菜や果物が同系の色を持ち、ストロベリー、ビーツ、うずら豆なども栄養に富み、色素だけでなく葉酸や食物ファイバー、ミネラルが豊富です。クランベリー、ラズベリー、赤/ピンクのグレープフルーツ、赤いパプリカなどはビタミンC源でもありますし、特にパプリカはビタミンAも豊富なので眼や皮膚にもいいものです。ナスやチェリー、プルーンは食物ファイバーでも特筆されます。クランベリーはボウコウ壁のバクテリア繁殖を抑える成分もあり、尿路感染から守ってくれます。

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トマトやスイカの色素のリコペンも強力な抗酸化物質で、前立腺がんの予防でも有名です。なぜか、食べたリコペンは前立腺に集中してフリーラジカルによる酸化ストレスから守ってくれます。

黄/オレンジ

ニンジンの色のベータカロテンは、体内でビタミンAに換って眼や皮膚を守るとされていますが、同時にベータカロテンは強い抗酸化力でがん予防にもなります。黄/オレンジ色の野菜・果物はビタミンC、カリウム、葉酸、ブロメライン(パイナップルの酵素)が豊かです。ミカンやオレンジ、レモンはビタミンC源として食べますが、黄パプリカ、サツマイモ、カンタループメロン、黄桃、マンゴー、パパイヤ、カボチャ、コーンなども高カリウム食品で高血圧予防に力を貸してくれます。

ブロメラインはタンパク質を分解する酵素で、消化を助けるとされ、炎症や浮腫の治療にも経口投与されることがあります。著名な女子プロゴルファーがブロメライン治療で腰痛から開放されてカンバックできた逸話があります。

緑/濃緑

濃緑の葉物野菜は食事に欠かせないものです。ホウレン草、小松菜、ケール、ロメーヌレタスなど実に豊富にあります。これらの野菜はビタミンAやカルシウムの宝庫です。ただし、ビタミンKも多いので、ワーファリンなどの抗凝固薬を服用している人は注意が必要で、医師に摂食量の確認をとることです。抗がん効果が期待できるアブラナ科のブロッコリや芽キャベツもありますし、キウイフルーツ、ピーマン、キャベツ、青リンゴ、ブドウ、洋ナシ、アスパラガス、ズッキーニ、グリーンピース等々、いくらでも思い浮かぶ各ビタミンや栄養素に富む野菜の代表的な色です。

精白した、真っ白い砂糖や小麦粉、精米は避けよう! というのがヘルシー食のモットーですが、野菜・果物に関しては「白色」はフラボノイドに富む立派な色なのです。ニンニク、タマネギ、カリフラワー、マッシュルーム、バナナ、ダイコン、カブ、ポテト、白菜等々、これまた数え始めたら限りがありません。抗酸化、抗がん、抗アレルギー作用のあるフラボノイドは4000種類以上もありますから大いに期待しましょう。


ヘルシーな食事にするというのは、今までの食習慣を一晩で根こそぎ変えることではありません。また、毎日5色の野菜・果物を食べようということでもありません。2~3日で5色にするのは意外と容易です。

自分の好きな料理に少しずつ野菜や果物を加えていくだけでも実現できます。忙しい都会派のビジネスパーソンには市販の冷凍野菜のストックを強くお勧めします。野菜・果物を常に手元に置いてください。本場でシーズンのピークに加工冷凍された野菜は、季節外れの温室育ちよりも栄養価が高いのですから。

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