脱法シェアハウスとは? どこに問題がある?
住宅のキッチンやリビングを住人で共有し、自分の個室を持つシェアハウス。新しいコミュニティが生まれることなどから注目されるようになり、シェアハウスの市場は徐々に拡大しています。保証金は必要ですが、敷金・礼金、仲介手数料などが不要なケースが多く、初期費用が抑えられるという点もメリットに挙げられるでしょう。(シェアハウスについて、詳しくはガイドの記事「着実に増加している事業者介在型のシェアハウス」を参照ください)
一方で、正規雇用でない若者や単身者が増加するなど、職探しをしている低所得が住宅困難者となっており、格安さと入居のしやすさをうたった脱法シェアハウスも増加しています。
脱法シェアハウスが注目されるようになったのは、インターネットカフェ業者が運営する施設が、レンタルオフィスといいながらも多人数の居住実態があることから、住宅に必要な火災報知器などが設置されていないとして、東京消防庁から消防法違反に基づく警告を受けたという報道がきっかけでしょう。
それ以降、オフィスや倉庫として届けが出ているものの、1~2畳といった小さなスペースを居住用として貸し出しているシェアハウスが、多く供給されている実態が浮き彫りになってきました。
では、何が問題視されているのでしょうか?
まずは、居住スペースとしての安全性の問題です。住宅については、個室に採光や換気のための窓を設けることなどの建築基準法上の制限があるほか、火災報知機の設置など消防法上の制限もあります。さらに共同住宅については、遮音性能や避難経路の確保などの多くの制限が加わります。
また、自治体の条例などで、さらに別の制限を設けている場合もあり、東京都の建築安全条例では、共同住宅の居室は広さが7平方メートル以上、道路や窓先空地に窓を設けることなどの制限を設けています。
これらの規制は、居住空間の快適性や安全性を確保するためのものです。脱法といわれるものは、こうした制限を下回っています。ベニヤ板で小さく区切ったり、トランクルームのようなボックスを設置したりして、多人数を収容できるようにしているので、日当たり、換気や個人のプライバシーが守られないといったことのほか、火災や地震が発生した場合の安全性に大きな問題があるのです。
脱法シェアハウスが増える理由は?
なぜ、こうした脱法シェアハウスが増加しているのでしょうか?もちろん、住宅困難者の受け入れ先として、借りる側にニーズがあることが挙げられます。初期費用が不要なだけでなく、保証人も不要で、家賃が2~3万円などの格安ということで、とりあえず定住先を見つけたいというニーズにマッチしているという背景があります。
しかし、最大の理由は業者がもうかるからです。広いスペースをオフィスや倉庫、あるいは住宅として貸し出す場合に比べると、1平方メートル当たりの収益性が高くなるので、初期投資で簡単な工事を行って、小さく区切って貸し出すわけです。
例えば、ファミリーマンション1室を家賃15万円で貸すより、10室に区切って3万円で貸せば賃料は2倍に、15室に区切れば3倍になります。こうした理由から、分譲マンションの1室を脱法シェアハウスに改修して貸し出すケースが見られるようになり、管理組合と住戸の所有者の間でトラブルになるケースが生じています。
収益性が重視されるということは、居住者の安全がなおざりにされることはもちろん、コミュニティの形成や近隣とのトラブル防止などへの配慮もなくなり、大きな社会問題として取り上げられているわけです。
>>次ページからは、政府の対応策や通常のシェアハウスへの影響について見ていきましょう。