小銭に結びつくと思ったら、恥も外聞もなく即実行!
■作品名木村家の人びと(1988年)
■監督
滝田洋二郎
■主演
鹿賀丈史、桃井かおり
■VHS販売元
ポニーキャニオン
1980年代、それまでの大手映画製作会社や配給会社とは一線を画した立場で製作される邦画が一気に増えました。そんな一風変わった作品の中でお薦めしたいのがコチラです!
■あらすじ
小銭を稼ぐ事に命を賭けている一家・木村家。父(鹿賀丈史)は職場で手作り弁当を販売し、近所の老人たちを使って新聞配達をさせている。母(桃井かおり)は早朝から艶っぽい声でモーニングコールのアルバイト。そんな生活を小学生の長女は普通に受け容れているのだが、幼い長男は違和感を感じて生活している。ある日、認知症になってしまった母親を引き取って欲しいと兄夫婦(柄本明・木内みどり)が木村家に押し掛けて来た上に、長男を引き取って自分たちが育てたいと言い出して……。
■お薦めの理由
とにかく生活の全てを「小銭」に結びつけて生きている木村家。その迷いのない生き方が清々しいです。朝起きて、家族がリビングに集合した時の掛け声が「1円、10円、100円、1000円、1万円~!!」
日常のどんな些細な事でも小銭に結びつくと思ったら恥も外聞もなく即実行。お金儲けという事に全くてらいがありません。
この作品を観て笑えるポイントの1つが、鹿賀丈史さんと桃井かおりさんと言う、生活感のないお二人が小銭に執着するという意外さではないでしょうか。お2人が何とも言えないテンポで台詞を交わしつつ、小銭をチャリチャリ云わせて行う「小銭H」のシーンはある種、日本映画の中で伝説に残る場面かもしれません。……まさかあの最中、小銭のチャリチャリ音にエクスタシーを感じてしまうとは!
この映画が公開された1988年、日本はまさにバブル絶頂期。そんな時に全身全霊で小銭を集める木村家の姿は、ある意味ブラックユーモアのテイも併せ持ちつつ、バブル時代の能天気さやパァーっとした明るさも画面から感じられ、小ネタ満載の構成を素直に受け取り、ケラケラ笑いながら鑑賞できてしまいます。今、この題材で作品を創ろうと思ったら、もっと重くずっしりとしたテイストになってしまうのでしょうね。
バブルという時代のお祭り騒ぎと軽妙さが画面から醸し出される、ちょっと変わった小銭命の家族のお話。元気がない時にアタマを空にして観たい1本です!