やってはいけない
一方、苦難の時代を乗り切るにあたって絶対にやってはいけないのは、まだドラマが固まりきってない初期段階で苦難を迎えてしまうこと。この失敗例が91~92年の『君の名は』と94~95年の『春よ、来い』。
『君の名は』は空襲で主人公二人が数寄屋橋で出会うのだからいきなり太平洋戦争末期。
『春よ、来い』は大正14年生まれ・脚本の橋田壽賀子ご本人がモデルなので青春期から戦争に向かっていく時代で暗さが拭いきれません。
昭和のころはまだ視聴者は戦争体験世代が中心だったので苦しくてもみてくれましたが、平成になるとついていけません。さらに『君の名は』は連続テレビ小説30周年、『春よ、来い』はNHK放送開始70周年記念作で放送期間は両方とも通常の倍の一年。長丁場を盛り上がらないまま終わってしまいました。
近年の太平洋戦争の扱いは終戦から始まって、明るい希望に満ちた戦後を描くというものが主流です。このパターンの先駆は1988年の『ノンちゃんの夢』。最近では『梅ちゃん先生』がこれです(にしても『梅ちゃん先生』はあまりにも気楽すぎる戦後でしたが)。
他には『ゲゲゲの女房』のように戦時中は少女時代で軽く流して、大人になって戦後を描いていました。
長すぎるのも
もうひとつ、苦しい時期が長すぎるのも当然辛すぎます。『春よ、来い』は放送期間が一年なだけにかなり辛い展開が長く続きました。それから現在の大河ドラマ『八重の桜』は
ガイド記事
「『八重の桜』大河ドラマは歴史の行間を読め」
でも触れましたが、結局会津藩が負ける「鶴ヶ城開城」は7月21日放送。全50話中の29話まで重苦しい雰囲気が続いてしまいました。
戊辰戦争後、特に八重(綾瀬はるか)が新島襄(オダギリジョー)と出会ってからは会津の無念を胸に秘めつつ明治という新時代を前向きに生きる展開で「こんな『八重の桜』が見たかった」というものになっています。
特にいいのが新島襄のキャラ。オダギリジョーの出世作『仮面ライダークウガ』の五代雄介に近い雰囲気です。東映は変身ヒーローのオーディションで「一年の長丁場は俳優本人の地が出るので、演技力より本人のキャラを重視している」そうなので、オダギリジョーの地に近いんでしょう。
ともあれ戦争や震災といった苦難の時代は、ドラマが明るく盛り上がり勢いをつけてから乗り切れ、ということで最後の一ヶ月から震災編に突入した『あまちゃん』はその意味でも正解です。
ユイちゃんをはじめ北三陸市の人々の明るい笑顔を取り戻していくのか?期待しましょう。