保育園などに子どもを預けて働く母親だけでなく、赤ちゃんや小さな子と1日中家庭で過ごす母親へのサポートの重要性に目が向けられるようになっています。自治体も、母親が1人で子育ての不安や負担を抱え込まないために、地域のつながり作りを中心とした様々なサポート体制を打ち出しています。しかし、行政の支援だけでは、どうしても手が届かない部分があります。育児に疲れて外に出る元気がなかったり、経済的事情で一時保育の利用をためらってしまったりして、一歩外に足を踏み出したくても出られない辛さを抱えている母親たち。そのような気持ちに寄り添うための、民間のボランティアスタッフによる「家庭訪問型子育て支援『ホームスタート事業』」が、少しずつ全国に広がり始めています。


家庭訪問型子育て支援『ホームスタート事業』とは

ホームスタート・ジャパン講演会

函館市で開かれた「ホームスタート・ジャパン」講演会

『ホームスタート事業』の対象は、乳幼児が1人でもいて、子育ての負担感を感じている家庭。子育て経験があることを基本条件に、研修を受けたボランティアスタッフが、希望者の家に出向きます。スタッフがすることは、「話を聴き、一緒に家事育児をする」ことです。現在、九州から東北までの市区町を拠点に、50を超える組織がホームスタート事業を展開しています。

NPO法人『ホームスタート・ジャパン』(西郷泰之代表理事)が、この家庭訪問型子育て支援策のノウハウとネットワークづくりについて伝えるために、全国各地で講演会を行っています。今月初め、まだホームスタート事業の実践例がない北海道で初めて、函館市でこの講演会が開かれました。


孤独な子育てになってしまう背景

講演会ではまず、参加者同士が、孤独な子育てになってしまう要因について、グループワークで意見を出し合いました。出されたのは以下のような意見です。

外に出られない理由

子どもと一歩外に出たくても出られないのは、なぜ?


恐らく、「全く外に出られない」という状況にまで陥っていない、または陥ったことがない方でも、似たような環境に閉塞感を味わったことがある方は少なくないのではないのでしょうか。


“すき間産業”の子育て支援策

西郷教授は、ホームスタート事業を“すき間産業”と表現します。行政の支援が埋められない“すき間”とは、どのような部分でしょうか。

孤独な子育てを防ぐための自治体の代表的な子育て支援策と、具体的内容、その支援がカバーできない“すき間”をまとめました。

表・行政の子育て支援策で埋められないすき間

【表】行政の子育て支援策で埋められない“すき間”


これらをカバーするのが、ホームスタート事業で家庭訪問をする「ホームビジター」。ホームビジターがするのは「家を訪問し、話を聴き、一緒に家事育児をすること」。ホームビジターの条件は、

  1. 子育て経験があり、ホームビジター養成講座を受講すること
  2. 専門家の資格を持っている場合でも、地域の親どうしとして、対等の立場で活動を行うこと
  3. 無償ボランティアであること

です。


なぜ訪問スタッフは「専門家でない無償ボランティア」?

悩みを抱えた人の話を聴くというのは、決して簡単なことではありません。そのような重要な活動に対し、無償ボランティアという形を動かせない条件とするのは、なぜでしょうか。西郷代表は、以下の点を挙げました。

・専門家は、話を聴くだけでなく、アセスメント(評価)や指導をしなくてはならない。

・よって専門家の立場では“対等の立場”になれない。



・有償化することで対等の関係が崩れる。

・家事育児を肩代わりする保育者・ヘルパーの役割になってしまい、一緒に家事育児をする仲間ではなくなってしまう。

悩んでいる人の気持ちを元気にするには、専門家のアドバイスよりも、対等な関係で話に耳を傾けてもらうことに大きな効果があることが、母子保健、精神保健、福祉の分野の調査で明らかになっているそうです。

>>親が元気になれば、親も子も救われる。