なぜ今、シンガポールのインターナショナルスクール(以下、インター)に通う日本人子女が増えているのか。シンガポールで子どもを育てるメリット、インターへ通わせるメリットと注意点をシンガポールに在住し、小学生2人のお子さんをインターナショナルスクールに通わせる星野由香里(ほしのゆかり)さんに聞きました。
――海外で子どもを育てるのはどんなメリットがありますか?
シンガポールへの移住予定があるなら、ウェイティングリストに登録して入学の順番待ちをすることを検討してみてはいかがでしょうか。
星野 シンガポールは日本よりもずっと早いスピードで社会が変化しています。その様子を目の当たりにできるのは発展中の国ならではのおもしろさがあります。1年もすれば街の様子もがらっと様変わりしてしまいますから。また、多国籍国家なので、いろんな国籍の人たちがいるなかで生活をします。最初は物珍しさがあるものの、すぐにそれが自然になり、逆に日本が特別な国になってきます。日本を客観的に見る目を養えるメリットがあると思います。
――逆に海外で子どもを育てて心配なことは?
星野 国語力と運動能力ですね。日本語のボキャブラリーもなかなか増えないし、文章読解力も不安です。ストーリー性のある物語などはある程度読みこなせるものの、説明文になってしまうと読み取れません。運動能力が下がるのも心配な点です。やっぱり日本の学校の体育はすごいです。例えば娘たちの通うインターでは鉄棒も跳び箱もやらせないので、どちらもできません。外遊びの機会もないので、体力はつきにくいです。
――海外でも日本人学校に通う子とインターに通う子がいます。インターならではの良さは?
星野 インターには数十カ国の生徒がいます。ひとつの社会だけでなくいろんな社会があること、授業の中でそれぞれの国の文化を小さい頃から尊重し合うことは日本では得られない体験です。多様な価値観が得られるのはいいですね。先生たちの国籍もアメリカ人、イギリス人、カナダ人、ドイツ人とさまざまです。それが良さでもあるし、一方で教育の一貫性がないということにもなるのですが。そしてやっぱり、他には日本にいるよりもずっと早く英語を話せるようになります。入学時に英語力がなくても多くのインターでは英語が母国語ではない、第2外国語として英語を学ぶ人のクラスであるESL(English Secound Languege)があるので何とかなります。
――インターに入る前に知っておいたほうがいいことは?
星野 先ほど、日本にいるよりもずっと早く英語を話せるようになると言いましたが、正確に言うと、「ある程度は話せるようになる」ということです。ボキャブラリーは小4、5くらいからネイティブとの差が出てきます。文法も授業ではあまり扱わないので、いわゆる日本の受験英語のテストで点が取れるかどうかはまた別です。算数も、概念を学ぶのが中心なので、日本のように計算力を地道に積み上げていくような指導はしません。あと、国語力をカバーするために読書した方がいいのはわかっているのですが、なかなか読む時間が取れません。学校の勉強もやることが多いので、教科書を読むので精一杯といったところです。
――インターに合う子はどんな子でしょうか?
星野 インターに向き不向きはないと思います。というのも、授業のカリキュラムが楽しめるようにできているんです。積極的な方が良さそうに思いますが、おとなしい子もおとなしいなりに楽しんで学べるように先生がうまくもっていきます。他にはインターの特徴として、親の参加の機会が多くあります。例えば特別授業で先生の代わりに、生徒の母親が代わりに入って自分の国の紹介をするとか。母親がどんどんコミュニティの輪に入っていけると、子どもも安心するようです。
――星野さんはシンガポールに移住して4年になりますよね。その間で変わってきたことは?
星野 インターに通う日本人が増えてきました。とても人気が高まっています。今、シンガポールのほとんどのインターは定員に達していて、ウェイティングリストに登録して入学の順番待ちになっています。あとは物価の安いマレーシアのインターに転校する家庭も増えています。シンガポールとの国境の町、ジョホール・バルに開校したイギリスの名門校マルボロカレッジも話題になっていますね。
――ありがとうございました。
急増するシンガポールの日本人インター生。シンガポールへの移住予定があり、インターに通うリスクを知ったうえでなら、ウェイティングリストに登録して入学の順番待ちをすることを検討してみてはいかがでしょうか。