学芸員の仕事2:教育普及
いま美術館は、「展覧会をする」ではなく、「展覧会だけでなく、いろいろなイベントをしていますから、ぜひ来てください」という場所に進化しています。「大竹伸朗展 ニューニュー」の展示会場でトークをする中田さん
また、美術を学ぶ大学生や地元の小・中学生などを対象にした「鑑賞プログラム」も実施しています。現代美術の作品には一見するととっつきにくいものもあります。そうした作品とお客様との橋渡し役が学芸員です。作品=アーティストがつくった視覚的な表現について、時に言葉で補いながら、時にお客様と対話しながら、中田さんはお客様により楽しんでいただけるよう心がけているそうです。
「丸亀市内に限ってますが、公民館でもお店でも10人以上集まってくだされば、美術館や展覧会について話をする『どこでもMIMOCA』というプログラムもやっています」(中田さん)。
また、丸亀市猪熊弦一郎美術館に限らず、多くの美術館では「ワークショップ」と呼ばれる絵を描いたり何かをつくるようなプログラム、美術館で音楽やダンスといったイベントもあります。
学芸員の仕事3:保存・修復
絵は紙と絵具、彫刻は木、といったように、作品の素材はもろいため、何かあった場合の対策は欠かせません。丸亀市猪熊弦一郎美術館では、気温や湿度を一定に保った収蔵庫が地下にあり、大切に作品を保管しています。展示をするときに、強い照明を当てない、額に入れる、作品の周りに結界(けっかい)と呼ばれる境をつくる、といった工夫もしています。
絵の具がはがれた、写真の色が変わった、という場合に対して、美術館によって保存や修復を専門とする学芸員がいたり、外部の修復専門業者に依頼をします。
学芸員の仕事の醍醐味
展覧会の裏方さん、という印象がある学芸員の仕事について、中田さんはどう取り組んでいるのでしょうか。プライベートも世界各地の展覧会やアートイベントへ出向く中田さん(2011年ヴェネツィア・ビエンナーレ)
私たちが学芸員は、アーティストの力を最大限に引き出し、多くの協力者の力を一つにまとめて、実現までの舵取りをしていきます。作品が大切な食材だとすると、私たち学芸員はその食材をお客様にお出しする料理人のような存在なのかもしれません。
特に現代美術はナマモノです。できるだけ新鮮なものを食べていただきたいと思う一方で、ナマモノならではの、想定外の出来事がしょっちゅう起こります。そうした不測の事態に対応しながらも、どんなふうに作品を見せたら、お客様に美味しいと思ってもらえるのかを考えることが仕事。普段の生活でも見せ方には関心があり、ついついショウウィンドウのディスプレイとか、スーパーやレンタルDVD店の陳列棚に目がいってしまいます」(中田さん)。
丸亀市猪熊弦一郎美術館は、日本人だけでなく海外のアーティストを紹介する展覧会も多いことが特徴です。
「この美術館では海外出張は原則ナシなので、プライベートの時間を割いて海外へ行きます。昨年2012年は、大竹さんが出品したドイツのアートイベント『dOCUMENTA(13)』を訪れました。作品のサイズを測ったり、お話をうかがったりしました。注目しているアーティストと現地で会うこともありますね」(中田さん)。
大変そうに聞こえますが、アーティストを支えながら展覧会をつくりあげる仕事人、それが学芸員だと言えましょう。
丸亀市猪熊弦一郎美術館の展覧会スケジュール
■企画展・大竹伸朗展 ニューニュー
2013年7月13日(土)~11月4日(月・祝)
・猪熊弦一郎展 抽象への目覚め(仮)
・猪熊弦一郎展 香川県立丸亀高等学校所蔵《妙義山》を中心に(仮)
2013年11月16日(土)~2014年2月16日(日)
・あそびのつくりかた(仮)
2014年3月1日(土)~6月1日(日)
■常設展
・猪熊弦一郎展 創意工夫の手あと
2013年7月13日(土)~11月4日(月・祝)