フランスで物議を醸しだした、強烈な印象が残る作品
『ジュテーム・モア・ノン・プリュ』(1976 フランス)
■監督セルジュ・ゲンズブール
■主演
ジェーン・バーキン
■DVD販売元
日活
今は亡きフランスのアーティスト、セルジュ・ゲンズブールが監督・音楽・脚本を手掛けた作品。
主演は当時、セルジュの妻だったジェーン・バーキン(現在活躍しているフランスの女優シャルロット・ゲンズブールは二人の娘です)
この作品は、過激な内容と性描写のため日本で初公開されたのは1983年、フランス本国でも物議を醸しだした問題作です。
見てみるとそれも納得。
ジュテーム・モア・ノン・プリュは同名のセルジュの曲があり、彼の代表作のひとつなのですが、日本語に訳すと「愛してる」「いや、おれも愛していない」というとても矛盾したニュアンスになります。
この映画の中で描かれているのはクラウスとパドヴァンというゲイのカップルと少年のような女性ジョニーの三角関係。
ジョニーを演じているのがジェーン・バーキン。
この映画の中のショートカットにタンクトップとジーンズ姿の彼女は、胸もぺったんこ、痩せていてうすっぺらくて、ガラス細工のように透明で壊れそうな危うさ。
女性が女性的な要素をこれだけ排除しているのに、美しいなぁと思ってしまう不思議な魅力があります。
この映画で描かれる恋愛というのは、ゲイカップルとゲイに恋した女性ということで一般的に感情移入できるものではないので万人におすすめできるものではありません。
私も最初に観た時、あまりに下品で汚くて卑猥な描写も多く、しかもかなり痛々しいシーンが多くセルジュ・ゲンズブールの意図するところがさっぱりわからなかったのですが、この映画の中に封じ込めたジェーンの両性具有の美しさには強烈な印象が残りました。
セルジュとジェーンが一番蜜月な時期に撮影されたというのに、ジェーンをこのように撮るというのは、もはや変態なのか、それとも深い愛の表れなのか?
とにもかくにもセルジュ・ゲンズブールが異才であったことは確実。
公開当時、批評家もすべてがクズ映画と批評した中でかのフランソワ・トリュフォーだけが絶賛し「これが芸術だ」と言わしめたという逸話があるそうです。
これは果たしてクズ映画なのか芸術なのか?
私もよくわからないのですが、まっとうで美しい恋愛だけではない、人間の本能むき出しの恋愛を見せつけられる強烈な作品であることは間違いありません。