さまざまな映画ネタが盛り込まれまれた作品
『おかしなおかしな大追跡』(72)
■監督ピーター・ボグダノビッチ
■主演
バーブラ・ストライサンド、ライアン・オニール
■DVD発売元
ワーナー・ホーム・ビデオ
サンフランシスコを舞台に、外見が全く同じの四つのかばんをめぐって展開されるコメディです。
四つのうち、ジュディ(バーブラ・ストライサンド)とハワード(ライアン・オニール)のかばんの中身は極普通のものでしたが、あとの二つには宝石と機密文書が納められていました。
それらのかばんがひょんなことから取り違えられて、彼らはスパイや悪漢たちに追われる身となります。
監督のピーター・ボグダノビッチは映画評論家から転進した“映画狂”として知られています。
この映画では、チャップリンやキートンに代表されるサイレント時代のスラプスティック(激しい動作を伴うドタバタ)コメディを再現しています。
それから、巻き込まれ型のサスペンスという点ではヒッチコックの映画を参考にしていますし、わがままなストライサンドと気弱で真面目なオニールの関係は、ハワード・ホークスの『赤ちゃん教育』(38)におけるキャサリン・ヘプバーンとケーリー・グラントのリメークです。
またオニールが、自身が主演した『ある愛の詩』(71)の「愛とは決して後悔しないこと」という名セリフを「くだらんね」と言うシーンもあります。
という具合に、この映画にはさまざまな映画ネタが盛り込まれています。
70年代はボグダノビッチの全盛期で、この映画のほかにも『ラスト・ショー』(71)や『ペーパー・ムーン』(73)といった名作を残しました。