コールセンターへの電話や個別相談会でまずは相談を
東日本大震災で返済不能のローンには「私的整理」も選択肢
まず、運営委員会が設置するコールセンターや、県の運営委員会支部、あるいは各県で毎月開催されている個別相談会で相談をします。そこでガイドラインの要件を満たす可能性があると、手続きを支援する登録専門家(弁護士・公認会計士・税理士・不動産鑑定士など)が紹介され、申出のための書類作成方法の支援が受けられます。弁護士費用等、専門家への費用は国が負担します。
債務整理の申出後は、銀行などの金融機関は申出を行った被災者から返済を受けたり、督促をすることはできませんし、債務者も資産を勝手に処分したりすることはできません。なお債務免除を受ける場合でも、上限500万円を目安に手元に現金を残せますし、さらに義援金や家財の地震保険金は原則として、それとは別に残せます。そのうえで自宅跡地をどうするか、車をどうするか、手持ちの預金をいくら返済に充てるかなどを専門家と相談しながら弁済計画案を作成していきます。
こうして弁済計画案を借入先の金融機関に提出すると、原則1カ月以内にそれに金融機関が同意するかどうかが示されます。全借入先が同意することで弁済計画が成立し、債務免除が行われることになります。
「私的整理」は自己破産などの「法的整理」と異なり法的な根拠はなく、あくまでも金融機関と被災者の間で話し合って決める際のルールです。そのため、申し出れば債務免除されるわけではありません。実際、2013年7月末現在のデータによれば、ガイドラインに基づき弁済計画が成立した事例は、相談件数約4529件に対し457件と約1割にすぎません。
せめて、地震保険だけには入っておこう
このようにガイドラインは、用いれば必ず債務免除を受けられるわけではなく、必ずしも個々の二重債務問題の解決にはつながりません。となれば、ローン債務者は住宅喪失のリスクに自ら備えなくてはならないわけで、地震保険契約が必須であることに、誰も疑いを持たないでしょう。ところが、住宅ローン返済中の世帯のうち4割は、地震保険に加入していません。地震保険の加入検討をしなかったと回答した2割は、その理由を「検討のきっかけがなかったから」と回答しています(損害保険料率算出機構「地震危険に関する消費者意識調査(平成21年調査)」)。
被災後の生活再建に困難が予想される世帯に地震保険が行き届いていないことは、個々の世帯の生活再建を困難にするだけにとどまりません。こうした世帯が多数に上れば、国や自治体の財政負担は増大し、地域の復興にもブレーキがかかることになってしまうでしょう。
わが国ではこれまで長年にわたり「家を持って一人前」と言われてきました。しかし、わが国が地震活動期になった今、私たちを取り巻くリスク状況は大きく様変わりしています。消費税率がアップする前に、低金利のうちに・・・と、昨今、住宅をより買い急ぐ向きもあります。しかし長期にわたる負債を抱え、今後のライフプランに及ぼす影響が大きい住宅取得には、より慎重に臨むべき時代になっているのです。
【関連リンク】
一般社団法人 個人版私的整理ガイドライン運営委員会
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