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堺正章 with ムッシュかまやつ・井上順コンサート

1960年代から50年の時を経て今なお輝き続ける堺正章、ムッシュかまやつ、井上順。60代、70代とは思えないエネルギッシュな歌、パフォーマンスでザ・スパイダース時代からそれぞれのソロ初期を振り返った至上の懐メロナイト……2013年7月25日、大阪の梅田芸術劇場で開催された『堺正章 with ムッシュかまやつ・井上順 スペシャルコンサート2013』のレポート。

中将 タカノリ

執筆者:中将 タカノリ

演歌・歌謡曲ガイド

日本音楽界の至芸

堺正章、ムッシュかまやつ、井上順……グループサウンズきってのエンターテイメントバンド、ザ・スパイダースで一世を風靡し、50年の時を経てなおテレビやコンサート、音楽制作の第一線に立つ3人のステージは、まさに日本音楽界の至芸のひとつと言っていい。
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堺正章 with ムッシュかまやつ・井上順

2013年7月25日、大阪の梅田芸術劇場で開催された『堺正章 with ムッシュかまやつ・井上順 スペシャルコンサート2013』に行ってきた。グループサウンズ研究家、DAIさんにお誘いいただき、この三人をまとめて生で観るのは初めてだったので一も二もなくお受けした。

僕が参加したのは夜の部だったが昼、夜と一日二回公演するのは、グループサウンズ時代の伝統にのっとってだろうか。60年代はコンサート一日複数回が当たり前の世界だったから、やっぱりあの時代に鍛えられた人は違うなぁと思いつつ会場に入っていくと、ロビーはお洒落なお姉さま、そしてロマンスグレーでいっぱいだった。ザ・スパイダースはあまたのグループサウンズの中でも五本の指に入る人気者。しかし、アイドル的な人気に終始していたザ・タイガースやオックスとは違い、音楽好きの男性ファンも一定数抱えているのが特徴なわけだ。

前半はザ・スパイダース時代を振り返りながら

一曲目は1965年のザ・スパイダースデビュー曲で"三つの手拍子"が特徴的な『フリフリ』。
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スパイダースは7人編成なのだが、かまやつのみ遅刻のため写真に参加していない

かまやつが遅刻してきたため仕方なく6人で撮影したレコードジャケットをスクリーンに映して『かまやつさんはメンバーじゃなかったでしょう。証拠があるんです。』(堺正章)というお決まりのネタに笑いを誘われながら、ザ・スパイダース時代を50年後の3人による寸劇と歌で振り返っていく。

いろいろ面白いネタはあったが、バンドのトレードマークをどうしようか悩んでいたエピソードの寸劇で『化粧をするっていうのも大変だし……そうだ! ズラはどうでしょう?みんなで派手に赤とか金とか……茶色とか!』(井上順)と言いながら一斉にかまやつの頭部を見つめた一瞬は僕の今年の面白センサーナンバー1だった。かまやつさん『ふざけんなよ! この野郎!』と激怒しておられましたが。

ともあれ『夕陽が泣いている』『エレクトリックおばあちゃん』など大好きなヒットや名曲の数々をああまで楽しく味わえるなんて、なんて贅沢なひと時だったんだろう。なんと言っても日本を代表するポップスメーカーと日本を代表する司会者2人が演出している空間なのでね。こりゃもうファンでなくても必見レベルだ。

後半はそれぞれのソロ初期を振り返りながら

後半は『お世話になりました』(井上順)、『さらば恋人』『街の灯り』(堺正章)などソロ・ヒットの数々(ムッシュかまやつは前半の終わりぎわに弾き語りで『我がよき友よ』など)にはじまり、間に井上順が、三十年以上コンサートを共にしているトメ北川(ハプニングス・フォー)ら『フレンズ』と共にダンスパフォーマンスを披露したりと、前半以上に盛り沢山な内容。

観客にとったら息つぐ暇もなく、気が付いたら9時の終演。

踊って歌っての連続でさすがに疲れも出てきたけれど、それでもなお魅力的に見せられるのは大御所ならではのワザと言うものだろう。『かまやつさんが限界なので』とアンコールこそなかったがラストの『風が泣いている』『バン・バン・バン』までテンションを保ちながらやり終えた姿はミュージシャン、エンターテイナーの老後の理想像であるように思われた。

音楽はエンターテイメントであって欲しい

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味奉行

終演後、ザ・リンド&リンダースの宇野山和夫さんが経営する餃子店『味奉行』に足をのばした僕とDAIさんは、コンサートや60年代のグループサウンズに関していろいろ意見をやりあっていたが「同じグループサウンズでもエンターテイメントとしてお客さんを楽しませようとしていたかどうかが、一流と二流の境目」というところで一致をみた。たしかにザ・タイガース、ザ・リンド&リンダース、そしてザ・スパイダースと僕が好きなグループサウンズはみんな一流のエンターテイメント集団だ。

個人的には現代日本の流行音楽の多くは一見エンターテイメントであって真のエンターテイメントではない気がしている。サウンドやパフォーマンスは変化して当然だが、そういう表面的なことではない、大事ななにが欠落してしまったように思われるのだ。そりゃあ必死で頑張ってるK-POPに負けるのも仕方ない気がするな、と若干辛口になったところで唐突に筆をおきたい。

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