「お母さん、おうちに帰りたい」という思いを実現
建物の各所には天窓が設置されており、そのため空間の広がりと明るさ、緩やかなつながりが感じられる設計となっています。ですので、前ページの「牢屋のような」という従来の治療・療養というイメージは全く感じられませんでした。そして、何より特徴的なのが居室です。全ての居室にはお風呂とトイレ、キッチンが独立で完備されており、入り口が建物の内と外に2ヵ所設けられています。要するに、普通の共同住宅、あるいは「家」といった趣で、病院の治療室にはない暖かみと安堵感を得られるようになっているのです。というのも、闘病中の子どもたちは「お母さん、おうちに帰りたい」と10人中10人が訴えかけるそうだからです。
入り口が外部にあるのは、例えば仕事帰りのお父さんが時間や他の利用者を気にせず、子どもに会いに来られるようにする配慮。そして、建物の周囲には樹木が植えられているため、季節の花や緑を楽しめます。一般的な病院での治療や療養は狭く閉鎖的な空間で行われることと比較して、対照的な環境な環境となっています。
神戸市の市民病院や先端医療センターなど医療施設が集まるエリアに立地されており、施設内の診療所(医師が24時間滞在)との連携による医療サービスも受けられます。このほか、一般的な病院にはない「教室」やのびのびと遊べるプレールーム、家族がホッと一息つけたり、場合によっては闘病中の子どもに知られることなく、感情をあらわにして泣くことができる相談室なども完備されています。
ハウスメーカーの住まいづくりのノウハウも貢献
そして、これらの環境を実現するのに効果を発揮しているのが、ハウスメーカー・積水ハウスの住まいづくりのノウハウです。具体的には高気密・高断熱の構造躯体に加え、空気環境配慮仕様「エアキス」などが採用されています。特に高性能フィルターが導入され、カビや粉じんを排除。これらにより感染症の発症の恐れがある小児がん患者の子どもたちのリスクを減らすことに役立っているわけです。このように積水ハウスをはじめとするハウスメーカーには、医療や介護、福祉分野におけるQOLの向上に貢献する様々なノウハウが蓄積されており、「チャイルド・ケモ・ハウス」はそれを象徴する代表的な事例ともいえます。
「チャイルド・ケモ・ハウス」は今年秋から本格的に利用者を受け入れるそうで、その利用料金は部屋の大きさにもよりますが、1日数千円程度となるそうです。遠隔地で小児がん治療を行うためには、場合によっては治療施設の近くに部屋を借りなければいけないケースもでてきますから、そういった面でも利用者には心強い施設といえますね。
ところで、「チャイルド・ケモ・ハウス」は「日本初の小児がん専門の治療施設」といわれるだけあって、その存在自体が非常にまれなケースであり、今後も各地に同様の施設が必要とされるといいます。また、神戸の「チャイルド・ケモ・ハウス」そのものの運営にも数多くの継続した支援も求められます。
ですので、公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金を通じて広く寄付を呼びかけています。今回の取材を通じて、小児がんやその治療環境について社会的な認知が広がればと思い、今回記事として紹介させて頂きました。