電気自動車・EV/電気自動車・EV基礎知識

電気自動車が必要とされる背景(2ページ目)

自動車産業は、近年2つの大きな問題に直面しています。私たちの経済生活を支えてきたレシプロエンジン車は、大量のCO2を排出すると同時に、地球温暖化の原因となっています。また、レシプロエンジン車のエネルギー源である石油消費の増加が、深刻な石油枯渇問題を招いているのも事実です。これら自動車産業が直面する2つの大きな問題を解決する手段として、今日電気自動車が注目されてきております。

中島 徳至

執筆者:中島 徳至

電気自動車ガイド


石油枯渇問題

レシプロエンジン車が大量のCO2を排出し、地球温暖化の一因となっていることはすでにお伝えしました。一方で電気自動車は、走行中に一切CO2を排出しません。IPCCの第4次評価報告書では、運輸部門における温室効果ガスの削減に効果的なものとして次世代自動車を挙げています。しかし、温室効果ガスの削減以外にも、石油依存からの脱却を図らなければならない理由があるのです。その一つとして挙げられるのが石油枯渇問題です。

■石油の寿命
レシプロエンジン車のエネルギー源である石油は、人類の生活に不可欠なものとなり当然のように消費されています。2013年現在JX日鉱日石エネルギーによると、2011年に世界で消費された石油の合計量は約5兆1050億リットルに及びます。日本はアメリカ、中国に次ぐ第3位の消費国で、全体の5%に及び、私たちの生活は石油がなければ成り立たないところまできていると断言しても良いでしょう。

生活が石油依存に偏る一方で、石油はあと55年で地球上からなくなると言われています。

各エネルギー埋蔵量

各エネルギー埋蔵量



一方では、石油はあと百数十年採掘可能だとする主張もありますが、人類が求める・求めないに関わらず、将来的に石油が必ず枯渇することは避けがたい事実です。私は、その現実にどう対応するかということが、採掘可能年数の議論よりも重要に思うのです。そして石油依存脱却のために有効な対策が、電気自動車を利用することだと捉えています。

■電気自動車のエネルギー源
電気自動車のエネルギー源は生活に馴染みの深い電気だということは今までお伝えしました。すでに皆さんご存じの通り、電気エネルギーは火力、水力、原子力、風力、太陽光など様々な方法で生み出すことができます。電気は生成される際に発電所でCO2を排出するため、発電までを考慮するとCO2を排出すると言えます。

各車種における1km走行あたりCO2排出量

各車種における1km走行あたりCO2排出量

それを考慮に入れたとすると、電気自動車にはどれほどCO2削減効果があるのでしょうか。「電気自動車のメリット・デメリット」の章でもお伝えしましたが、これを専門的に検討した水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)の総合効率検討委員会の分析によると、1kmあたりのCO2排出量はレシプロエンジン車の平均が190gであるのに対して、電気自動車は約50gと、およそ1/4になっています。

他にも、発電の過程でCO2を排出しない原子力発電に、化石燃料の枯渇を解決する手段として注目が集まっています。しかし、フランスのように原子力で電力を作る国が完璧かといえば、もちろん断言はできません。旧ソビエトのチェルノブイリ原発事故、そして東日本大震災時の福島原発事故の過去をたどれば安全性を疑問視する声が多くなって来ているからです。

そこで、化石燃料の枯渇と原子力発電の危険性を解決するものとして自然エネルギーが注目され始めています。再生可能エネルギーとも呼ばれていますが、化石燃料のように使えばなくなるものではなく、原子力のような事故の危険性も少ないです。代表的なものが水力発電でその他にも、地熱発電、太陽光発電、風力発電といった方法もあります。

発電源は、各国の資源埋蔵量や自然・気候などによって条件が異なるため、どれが最も良いかと決められるものではありません。水力、火力、原子力などをそれぞれの国や地域の実情に合わせて使用し発電するエネルギー・ミックスの多様化で対応しています。

こうしたエネルギー・ミックスのバランスを上手くとり、かつ、環境に優しく再生可能な自然エネルギーの更なる導入が、石油枯渇問題の脱却に必要となるでしょう。その中でも、レシプロエンジン車に取って代わる次世代自動車として電気自動車の普及が、化石燃料に依存しない社会を構築していくと私は考えます。
エネルギーミックスに見る石油依存率

エネルギーミックスに見る石油依存率


電気自動車のエネルギー源

電気自動車のエネルギー源

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