地球温暖化、エネルギー問題、そして 電気自動車が必要とされる背景
現在までの自動車産業は、ガソリン車とディーゼル車を中心に私たちの生活を大きく支えてきました。これらガソリン車とディーゼル車は、内燃エンジンであるレシプロエンジン(Reciprocating engine)を搭載し、ピストンがシリンダー内で往復運動をして出力を発揮することで、自動車を走らせることができました。(以下、ガソリン車とディーゼル車の総称をレシプロエンジン車と呼ぶことにします。)しかしこれら自動車産業は、近年2つの大きな問題に直面しています。私たちの経済生活を支えてきたレシプロエンジン車は、大量のCO2を排出すると同時に、地球温暖化の原因となっています。また、レシプロエンジン車のエネルギー源である石油消費の増加が、深刻な石油枯渇問題を招いているのも事実です。これら自動車産業が直面する2つの大きな問題を解決する手段として、今日電気自動車が注目されてきております。以下では、その電気自動車が必要とされてきた背景を詳しく説明すると同時に、今後の社会において電気自動車が真に必要とされる理由についてお話しできればと思います。
地球温暖化の影響で引き起こされる現象とその原因
産業革命以降、技術の発展に伴い人類は石炭や石油などの化石燃料を大量に消費するようになり、大気中の二酸化炭素濃度が激増しています。結果として、地球全体の気温も近年上昇傾向にあり、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)は今後100年間での気温上昇について「これからも人類が同じような活動を続けた場合、21世紀末には二酸化炭素濃度は現在の2倍以上になり、それに伴い、今後100年間で最大で6.4℃、最小で1.1℃気温が上昇する」という見解が示されています。地上気温の変化の予測
このように温暖化が進行した場合、地球に一体何が起こるのでしょうか。温暖化が引き起こす弊害は数多く予想されており、世界各地で異変が起こり始めているのです。
■海面上昇
国立環境研究所によれば、この100年間に地球の平均海面水位が17cm上昇したという結果が出ています。IPCCは、海面上昇の主な原因として「海水温が上昇したことによる海水の熱膨張」と北極大陸上にある巨大な氷の固まりである「氷河や氷床の融解」を指摘しています。
2007年5月に行われたNCAR(米国国立大気研究センター)の調査では、北極海の氷が以前の報告に比べて三倍の早さで融解しているという研究結果が公表されています。また、JPCC第4次評価報告書(気象庁)によると、100年後の地球上の海面水位上昇の予測は約18cm~60cmと言われているのです。
このように氷河や氷床が融解し、海水面が上昇すると世界中に影響を及ぼすことになります。例えば、海面が1m上昇すると、海抜が低く人口密度の高い部分(ナイル・デルタ・フロリダ沿岸・ルイジアナの大部分・バングラディシュ)では人が住めなくなります。そして多くの科学者が予想するように、海面上昇によってニューヨーク、サンフランシスコ、香港、東京といった世界中の大きな沿岸都市は水没の危機に直面します。
また、海面・海水温上昇によって文化的損失を被る地域があります。例えば、イタリア・ベニスでは、多くの建造物の健全性が頻繁な浸水によって損なわれていますし、オセアニアにあるツバルは、一番高いところでも海抜4~5mであり、このまま海面上昇が続けば国家自体がまるごと海の底に沈んでしまうでしょう。
さらに言えば、北極海に住むホッキョクグマやペンギンなど氷の融解によって影響を受ける動物も多いです。ACIA(北極圏における気候評価)の報告書では、今世紀中に絶滅する可能性が指摘されています。
■異常気象
地球温暖化の影響と考えられる洪水、ハリケーン、熱波や干ばつ、それに伴う森林火災などの異常気象の発生頻度が増加しています。熱波・干ばつに関しても、地球温暖化との関連が認められています。イギリスの研究機関であるハドレーセンターの研究者らの分析によると、「人類が排出した温室効果ガスによる温暖化は、2003年の熱波の発生リスクを2倍に高めた」ということを明らかにしています。また、IPCC第4次評価報告書でも、熱波・干ばつ、ハリケーンは地球温暖化の進行にともなって発生回数が増加する可能性が高いと指摘しています。
■様々な現象が引き起こされる原因
さて、これまで地球温暖化が原因で起こると懸念されるさまざまな現象についてお話させていただきましたが、そもそも地球温暖化の原因となるCO2は具体的にどこからやってくるのでしょうか。
化石燃料として主に挙げられるのは、石炭、石油、天然ガスなどです。これらは、電気、輸送、暖房、冷房、および工業システムのために燃焼されます。特に石油はガソリンに加工されて自動車の燃料となります。
IPCC第4次評価報告書によると、2004年の人為起源温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量の内訳で、化石燃料起源CO2の排出量が約6割を占め、圧倒的に多いことが分かります(第5次評価報告書は2014年9月発表予定)。そしてその排出量は年々増加しています。また、部門別排出量の内訳を見ると、運輸部門は世界平均で約13%を占めています。日本の運輸部門の排出割合は2013年時点で18.6%、そのうち50%を自家用乗用車が占めているのです。(国土交通省調査)つまり、自動車が排出するCO2を削減することが、地球温暖化を防ぐ大きな要因と言えるでしょう。
CO2排出量の割合
人為起源温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量
日本の各部門におけるCO2排出量
以上のことから、自動車から排出されるCO2が地球温暖化の主要要因となっていることがわかります。なお、二酸化炭素の排出量では、中国、アメリカが毎年50億トン以上排出し、日本はそれらの4分の1程度の排出量を占めています。さらに新興国では経済の発展とともに人口の激増が始まっており、自動車の普及が予想されます。レシプロエンジン車が広く使われるようになればさらなる温暖化は免れないでしょう。