アメリカ的独立精神を見つめ直した『ワイルドバンチ』
あらすじ
1913年、テキサス。パイク率いる強盗団の“ワイルドバンチ”は最後の仕事に失敗し生き残った5人でメキシコへ逃走する。賞金稼ぎ達の追跡をうけ彼らはマパッチ将軍率いるメキシコ政府軍の本拠地に逃げ込む。そこでパイク達はマパッチに高額報酬でアメリカの軍用列車から武器を奪うよう依頼される。列車強盗を成功させるも、マパッチを憎むパイクの仲間エンジェルは武器の一部を反政府ゲリラに渡し、それがマパッチ側に洩れてしまう。
エンジェルを捕らえ凄惨なリンチを加えるマパッチ。仲間を見捨てられないパイク達は彼を助けるため、わずか4人で二百人以上のマパッチ軍に戦いを挑むのだった。
おすすめの理由
欧米の映画・文学にはピカレスクと呼ばれる悪者を主人公とする物語の長い伝統があります。そして正にその様な類型の物語に属する本作ですが、主人公はおろか全登場人物が様々なタイプの悪党です。にもかかわらず本作はアクション映画史に偉大な足跡を残す名作として今も語り継がれます。その理由に、クライマックスのスローモーションを多用した伝説の銃撃戦(死のバレー)が後のアクション映画及び監督達に多大な影響を与えたから、という意見があります。
また死を賭しても仲間を助けるために戦いを挑む、悪漢なりの滅びの美学に、男心に響く甘美なカタルシスがあることを挙げる方もいます。
本作はよく最後の西部劇と呼ばれます。しかしここにはかつてジョンウェインが演じたような米国の正義を体現するようなヒーローは現れません。いるのは西部開拓時代の終焉後も時代に適合できない自由な荒くれ男達です。
彼らはその先に破滅が訪れると知っていても自由に生きる道を選びます。私にはここに米国の自由独立の精神や個人主義が見えます。
また制作時、ベトナム戦争の泥沼化に伴う社会秩序やモラルの崩壊で米国は自信を失くしていた背景があります。
ピカレスクは本来悪党を通じて社会等への批判精神を映し出すものなので、その意味において本作はアメリカ的なる精神に立ち返り自らを見つめ直そうとしたむしろ良心的作品なのかもしれません。
■ワイルドバンチ(The Wild Bunch)
・監督 サムペキンパー
・主演 ウィリアムホールデン アーネストボーグナイン ロバートライアン
・データ
- DVD発売 有
- 販売元 ワーナーホームビデオ