膝の手術を中止!新団体に賭ける武藤の覚悟
慌ただしい新団体設立となった武藤ですが「これから大変な思いをするんだろうけど真っ白なキャンバスから始めるから、前向きで楽しいよ。積み木を組み立てているみたいで毎日が楽しいですよ」と笑顔。02年10月に全日本の社長に就任した時は、生まれも育ちも新日本プロレスでありながら、ジャイアント馬場の歴史と伝統を背負っての発進だっただけにプレッシャーやしがらみは相当なものがあったはずです。新日本所属選手として全日本にスポット参戦していた時には救世主として歓迎されましたが、社長になるや、古くからの全日本ファンからの拒絶反応を食らってしまいました。馬場・全日本を武藤・全日本に移行させるのは並大抵ではなかったことを考えると、今回の旗揚げの方がある意味で心は軽いかもしれません。
このW-1は来年でレスラー生活30年を迎える武藤の叡智が詰まった団体と言ってもいいでしょう。新日本でアントニオ猪木のストロングスタイルを叩き込まれ、デビューわずか11ヵ月でフロリダへ修行に出されてアメリカン・プロレスに触れ、その後はプエルトリコ、テキサス、アメリカのメジャー団体WCWでトップ選手となり、全日本では馬場の王道に触れると同時に経営者としての経験も積みました。そのすべてがW-1で生かされるのです。
興行形態をシリーズにするというのも「プロレスは単発の試合の点で見せるものではなく、ストーリーのある線にして見せることでファンを惹きつけるもの」ということを学んだからで、様々な土地に行ってライブでファンに見せることが大事なことも知っています。所属選手が少ないという現実の中では他団体との交流も考えており「鎖国はしないから」と断言。その上で、旗揚げ戦に向けて一致団結している所属選手に対しては「あまりに仲良しこよしじゃ闘いが見えない。プロレスって幅が広いから志が一緒のようにみえて誤差があったりするわけだから、それぞれの主義主張をぶつけ合ってほしい。自分が出るためには誰を食ったらいいか、誰に喧嘩を売ったらいいか。俺がやりたいのはファイティング・エンターテインメントだから」と注文をつけています。
さて、注目は新団体W-1になってのプロレスラー、武藤敬司です。この春まで全日本を離れることなど考えていなかった武藤は、実は6月5日に膝の手術をすることになっていました。5月11日の小橋建太引退興行への出場後に発表するつもりでいましたが、その頃から白石オーナーとの関係は修復不可能になっており、手術を取り止めました。そこにあったのは「今、ここで休むわけにはいかない」という決意です。全日本の会長職に落ち着くのではなく、新団体を作ってまだ現役プロレスラーとしてリングに上がり続けるのが武藤敬司の運命だったのでしょう。
「ハッキリ言って、みんなが思っている以上に膝の状態は悪いよ。現実問題としてどれだけできるかっていう部分ではプロレスラー、武藤敬司に葛藤はあるけど、日々闘うよ。旗揚げ戦までにはまだ時間があるから、コンディションだけはしっかり整えようと思う」と力強く宣言した武藤。
かつて武藤は「尊敬している先輩は誰ですかって聞かれるけど、いねぇよ。先輩方が悪かったから、プロレス界は大変になったんだからさ。誰を目指していいか道標を作った人はいねぇわけだ。そういう部分で言ったら、少しは道標になるぐらいにまでは行きたいかなって気持ちだけはあるよ。やっぱり見本たる者が頑張らなきゃいけないし、そうでなければ下は付いてこないからね」と言っていました。
プロレス業界をリードする長として、プロレスラーとしての武藤敬司の最後の闘いが9月8日の東京ドームシティホールから始まります!