2017年は戦後3番目の景気拡大期だが手取りは減少
日本経済は2012年12月から2017年3月まで、52カ月間(4年4カ月間)にわたって景気回復が続いています。「これは戦後3番目に長い景気回復ですが、家計が楽になったとか、豊かになったという実感が持てないのが正直なところでしょう」とファイナンシャル・プランナーの藤川太さん。「要因の一つは景気回復がなかなか賃金に反映されないこと。名目賃金上昇率から物価上昇分を差し引いた実質賃金上昇率は2016年度にはやや上昇となったものの、傾向としては低下しています」
その一方で、税金や社会保険料(公的年金の保険料や健康保険料など)の負担は増しています。「収入に占める税金+社会保険料の比率を見ると、以前は15%程度だったのが現在は18%を超えています」。つまり、額面の収入が同額であれば手取りは以前より減っているのです。
エンゲル係数は29年ぶりの高水準で生活にゆとりはない
「手取りが減ると、家計費の中でも減らしにくい食費などは比率が高くなります。実際、家計費に占める食費の比率である『エンゲル係数』は上昇しており、2016年には25.8%に。29年前の1987年につけた26.1%以来の高い水準となっています」。エンゲル係数が高くなるほど他の費目にお金が使いづらくなるので、生活にゆとりがなくなります。また、食品も含めて物価については同じ価格でも内容量が減るなど実質値上げの傾向もあります。「加えてヤマト運輸など宅配便の送料引き上げが物流コストの上昇につながり、今後、物価全体を押し上げることも考えられます。家計にとっては、給与が増えない中で物価が上がるという負のサイクルに入ったといえそうです」。
人手不足で賃上げが起これば家計にとって正のサイクルに
とはいえ暗い見通しばかりではないと藤川さんは続けます。「今年4月の有効求人倍率は1.48倍でバブル期の1990年7月の1.46倍を上回りました。本格的な人手不足により、人材確保のため企業が賃上げに踏み切れば、『賃上げ→家計改善→消費回復→実感できる好景気→賃上げ』という正のサイクルに入る可能性もあります。しかし企業にとって賃金の引き上げは固定費の上昇なので、なかなか踏み切れないというのも現実。期待したいところですが、すぐには難しいかもしれません」。投資商品の“増やす力”を活用
このように先行きが厳しく不透明だからこそ、計画性を持って資産形成に取り組むことがますます重要です。結婚、出産、マイホーム購入、子供の進学などさまざまなライフプランを実現し、かつ老後資金の準備も行うだけの実力を養うには、まず1000万円という目標額を達成することが不可欠です。1000万円に向かって歩み出すには、家計の見直しをして毎月一定額を積み立てに回すことが基本になります。ただし安全な預貯金だけではほとんど金利が付かないため、なかなか目標に近づきません。「1000万円達成をスピードアップしたいなら投資商品の“増やす力”を借りる必要があります」。
投資というとまとまったお金が必要なのではと思う人もいるかもしれませんが、月1000円程度からできる投資信託の積み立てなどもあるので、意外と手軽に始められます。「投資信託での積み立てはNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)、さらに2018年にスタートする積立NISA、それから今年から利用者が拡大したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)でもできます。これらは運用益非課税などの税制優遇措置があり、有利に資産形成ができるのでお勧めです」。
経済ショックを活用して資産倍増
投資も活用しながら上手に資産形成をするには、経済サイクルの活用も覚えてほしい、と藤川さん。「経済には一定のサイクルがあり、10年に1~2回大きな経済ショックが起こります。前回は2008年9月に起きたリーマンショック。あれから既に9年近く経過しているので、今年か来年あたりに大きな経済ショックが来ても不思議ではありません」
経済ショックというと真っ暗なイメージですが、実は資産形成の大きなチャンスでもあると藤川さんは言います。「株価などの暴落はいわばバーゲンセール。そこでまとめて安く買い、その後の景気回復期に値上がりしたところで売れば、100万円を200万円に増やすなど資産倍増もそれほど難しいことではありません。いま30代の人なら働く期間は30~40年あり、大きな経済ショックは5~6回ほど訪れるはず。しっかり活用してお金を増やしましょう」。そのためにもこれから運用を始める人は、まずは積み立てで元本をコツコツ貯めましょう。
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取材・文/萬真知子 監修/藤川太(ファイナンシャル・プランナー)