逆境に立ち向かう少女の物語 『キューポラのある街』
吉永小百合が史上最年少の17歳でブルーリボン賞主演女優賞を獲得し、一躍、青春映画のトップスターになった作品。熱狂的な吉永小百合ファンが急増し「サユリスト」と呼ばれるようになるのも、この映画がきっかけでした。吉永小百合演じる主人公のジュンは中学3年生。優等生ですが、おとなしくしているタイプではなく、誰にでも言いたいことをはっきり言い、考えるよりまず行動に出るタイプ。弟の窮地を救おうと、街のチンピラがたむろする店に乗り込んでいったりします。危なっかしいくらい真っ直ぐなところが魅力のキャラクターで、目が離せません。
表題の「キューポラ」とは鋳物工場の溶解炉のこと。全国有数の鋳物の街だった埼玉県川口市が舞台です。長年勤めた鋳物工場をクビになったジュンの父は、長女ジュンを筆頭に3人子どもがいて妻は妊娠中というのに、職探しに奔走するどころか、ふてくされて飲んだくれる始末。一家は貧乏のどん底に陥り、ジュンの高校進学も難しい状況に。ジュンはこの逆境にどう立ち向かい、自分の道を切り開いていくのか?というのが、この映画のメインストーリーです。さすがのジュンも自暴自棄になりかけるのですが……。
■キューポラのある街
■公開 1962年
■監督 浦山桐郎
■主演 吉永小百合