電気自動車のデメリット
■航続距離が短いデメリットとしてまず挙げられるのは、一度に走れる距離が短いという点です。多くのガソリン車が一度の給油で通常500km以上走行できるのに対し、現在、世界で最も売れている電気自動車である日産リーフの航続距離はJC08モードで228kmです。それがエアコンやヒーターなどを使用すると実走行距離が約半分に減ると言われています。また電気自動車は寒冷地や上り坂が大変苦手であり、更に実走行距離を落としてしまう可能性があります。
以上の理由から、電気自動車の走行距離を気にかける人々も多いでしょう。電気自動車がヒーターとエアコン、そして上り坂を克服するためには、大電力を走行電力とは別に必要とするということです。この問題をクリアするために、ヒーター、エアコン、上り坂の三悪条件で電力を消費させないよう幾つも研究が進められています。
また、アプローチの仕方を変えて電池性能が向上すれば、この問題は解決するという見方もあるのも事実です。現在バッテリーの価格は高く、エネルギー性能は十分ではありません。しかし、2012年の日本経済新聞によると、産業技術総合研究所と東レが容量を従来技術の1.5倍とした大容量リチウムイオン電池の試作に成功し、その技術を取り入れようとする各メーカーの動きも見られます。また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、2020年をメドにリチウムイオン電池のエネルギー性能を現状の2.5倍に高め、価格も5分の1に下げるとの計画があります。
今後、電気自動車には様々な使用シーンが求められます。それら用途の二―ズを満たすためには、航続距離の延長が必要だと思われがちですが、国土交通省の自動車輸送統計によると自家用常用車の平均走行距離は、38.7km、軽自動車に関しては27.8kmという調査結果も出ています。航続距離の短さという電気自動車のデメリットが本当にドライバーにとって不自由なのかどうかは、議論の分かれるところでもあります。
■車両価格が高い
電気自動車は、ガソリン車に比べ車両が高価で、補助金を考慮しても300万円前後の価格になります。この高価格の原因は二つあり、一つはまだ交流式モーターとリチウムイオン電池搭載型の電気自動車が普及していないために大量生産による量産効果が得られていないことです。もう一つは他国に比べ十分な補助金が準備されていないことです。
しかしその高値に目をつけ、安価な電気自動車の普及を目指すスモールハンドレットと呼ばれる整備工場の経営者群が、直流式モーター搭載電気自動車を製造や販売しています。
また、経産省のNEDOロードマップによると、現状1kWhあたり約10万円もするリチウムイオンバッテリーを、2015年には約3万円に、2030年までには約1万円までコストダウンする計画があります。現在は車両価格のおよそ半分をバッテリーが占めているため、このコストダウンが持つ意味はとてつもなく大きなものがあります。
■急速充電インフラ数とその技術不足
ガソリン車は全国各地のガソリンスタンドで給油するのに対し、電気自動車は主に家庭での充電や充電スタンド等のインフラで充電することになります。現在はこの充電インフラ充電スポット数が少なく、車両の航続距離を超える距離の移動が困難な状況です。電池性能によって充電時間は異なりますが、電池がカラの状態から満充電80%まで急速充電するのに、一般的なものでは約30分必要とされています。
しかし施設や駐車場などへの簡易的なコンセントの設置や、小型や中型の急速充電器、50kW級の大型充電器などインフラ整備は着実に進んでいます。このインフラ整備とバッテリー性能向上が、電気自動車普及のカギとなります。
効果的な補助金の活用により、いち早く使いやすさを考えインフラを整備し、きめ細かなユーザーのニーズに応える必要があります。例えば、ナビゲーション上に表示される充電機設置場所の情報に加え、充電順番待ち数、他車の充電完了時間の情報などが必要になるでしょう。これらインフラ整備(ハード)と使い方(ソフト)の進展と融合が、将来の電気自動車の普及に繋がる、大きな役割を果たすことに間違いありません。
■電池の安全性
エネルギー密度が高いリチウムイオン電池は、単位重量あたりの蓄電量が大きい一方で、充電時の電圧制御や衝撃などへの配慮が欠けると最悪の場合、破裂・発火する危険性をはらんでおります。現に、ボーイング787の発火事件やリチウムイオン電池を利用した携帯電話やノートパソコンでは電池が発熱し爆発するという事故が起こっており、今後は、電気自動車を普及させるうえでも、リチウムイオン電池の更なる研究と制御技術(BMS・BMU)の技術革新が必要となってくるでしょう。
エネルギー密度が高いリチウムイオン電池における危険性
以上から、電気自動車にはそれぞれメリット・デメリットがあります。今日考えられるデメリットは、技術革新やインフラ整備が進めば解消されていくでしょう。しかし、電気自動車が真に普及されるためには、「車中心の社会を作るのではなく、社会に合わせた車を作る」という考え方が必要になってきます。現状では、電気自動車の一充電での巡航距離が短いため、そのことを加味した利用シーンを考えることで、社会が真に求めている車の本質が見えてくるのです。そのような考え方で、電気自動車はモノを運ぶ、ヒトを運ぶ、エネルギーを運ぶ車として求められる国や地域で普及していくだろうと私は考えます。