電気自動車のメリット
前章である「電気自動車とは?」でお伝えしましたが、電気自動車とガソリン車はその仕組みや構成にそれぞれ違いがあります。ゆえに、そのメリット・デメリットも異なってきます。今回は電気自動車に焦点を当て、そのメリット・デメリットを説明することで、電気自動車のあるべき姿を理解していただければと思います。■低排出ガス
電気自動車が注目される最も大きな理由は、当然ながら環境にやさしいという点です。走行中の1km走行する当りのCO2排出量は、ガソリン車が約190gなのに対し電気自動車はCO2を排出しません。火力発電など化石燃料を用いた発電時の排気ガスを考慮した場合でもその排出量は約50gと、ガソリン車と比べおよそ1/4の排出量で済みます。また、もし走るための元となるエネルギーが太陽光などの自然エネルギーに代わるとすれば、ほとんど環境に負荷を与えません。ですから、電気自動車は年々深刻となっていく地球温暖化問題解決のため大きく期待されています。
CO2排出量の少ないEV (出典) 経済産業省の「水素・燃料電池実証プロジェクト」より中島作成
■経済的
電気自動車は、経済性も兼ね備えています。同じ距離を走行する際にかかる電気代は、ガソリン代の約1/3、深夜電力で充電した場合、最小で約1/9のコストで済むのです。
例えば、三菱の電気自動車「i-MiEV」を深夜電力でフル充電した場合、約160円で160km、約1円で1km走れる計算になります。一方で三菱のガソリン車である「i」のターボエンジン搭載モデルは10-15モード燃費が18.6km/Lであるので、ガソリンが150円/Lとすると1km走るのにかかるガソリン代は約8円です。あくまでも机上の計算にはなりますが、電気自動車「i-MiEV」の燃料代はガソリン車「i」の1/8ほどに抑えられます。
さらに電気エネルギーは火力、風力、原子力、太陽光などの様々な発電方法があり、多様なエネルギー資源から生み出すことができるため、電気供給は今後更に安定していくと考えられます。それに対しガソリンは原油価格の影響を直に受けるため、今後燃料費は上がっていく傾向が予測されます。
■車としての走行性能
電気自動車は車としての走行性能に優れています。電気自動車に使われるモーターは発進時の回転軸の中心に働く力の能率(トルク)が大きく、強力な加速性能を元来持っています。
米テスラモータース社のスポーツカータイプの電気自動車、テスラ・ロードスターは、モーター特性を生かした制御を行っており、ポルシェ911並の加速性能があり、3.9秒で0km/hから96km/hまで加速することができます。さらにガソリン車のような振動はなく、モーターは静かで騒音も小さく、ガソリン燃焼時の臭いもありません。すべての電気自動車に言えることですが、振動と騒音がなくなったことでワンランク上の高級車に乗っている様な贅沢な室内空間をもたらします。まさに移動空間の快適性を追求した車とも言えるのではないでしょうか。
■自由度のあるデザイン
電気自動車のデザイン自由度の高さは2つの視点から説明することができます。1つ目が、技術視点でのデザイン変化で、2つ目が、使用シーンに見合ったデザイン変化です。
まず技術視点では、ガソリン車のエンジンや燃料タンクなどの代わりに使われる電気自動車のバッテリーは、比較的自由に車載することができます。そして、電気モーターが車輪の内部に装備されるインホイールモーター車の場合は、モーターがボディ内から無くなるため、さらに自由なパッケージを取ることができます。
日産自動車 PIVO2
日産自動車のコンセプトカーで、インホイールモーター車のPIVOは車体を360度回転させることができます。PIVO2では車体と直接繋がれる駆動系・操作系のギア・シャフトをなくすことで4輪が90度回転し、真横へ移動することが可能になります。その動きのためかデザインは丸く360度を見渡しやすいデザインとなっています。
2つ目が、使用シーンに見合ったデザイン変化についてですが、みなさんは電気自動車を求めるユーザーはどのような走行シーンを想定していると思いますか。
例えば、環境にやさしい車両なので観光地で走行させたいという自治体があるかもしれません。自社のアピールを行いたいと思う大手企業などはCSR(企業の社会的責任)を意識したデザインの車両を求めるかもしれません。また、身近なライフラインとして低速で電気自動車を利用する高齢者には、運転しやすさと乗りやすさを求めたデザインが必要となるかもしれません。電気自動車になることで多様化するデザインは、ユーザーを満足させてくれるポイントの一つになっていきます。
つまり、実際にユーザーに見合った最適な性能、価格、そしてデザインを提供することが大切であり、電気自動車はそれを実現させることのできる車だと思います。ただ性能を向上させることだけに目が行くと市場のニ―ズを見落としてしまいます。それぞれのユーザーに見合った価値を提供していくことが重要になっていくのです。