昔ながらの伝統が息づく、伝統工芸の宝庫アッペンツェル
アッペンツェル地方の民族衣装に身を包んだ男女 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
チューリッヒの東、オーストリア国境も近い
スイス東北部、オーストリア国境も近い山岳地帯にある村がアッペンツェルです。昔ながらの伝統を色濃く残す村で、地方色の強さはスイスの中で筆頭に上がります。アッペンツェルという村の名前の語源は、「大修道院長の部屋」の意味。昔この土地は近郊の大きな町、ザンクトガレンの修道士によって開かました。切妻屋根と壁画に彩られた家並み。門前にかかる凝った看板。どこを見ても思わず「可愛い!」という言葉が出てきそうな町です。
メインストリートに並ぶカラフルな建物 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
ハウプトガッセと呼ばれる通りが村のメインストリート。わずか500メートルの間に土産店が軒を並べます。特に刺繍製品をはじめとする伝統工芸品で有名です。ホテルは約10軒。周辺にも観光スポットが点在しているので、できれば1~2泊してみたい村です。
スイス製ハンドメイドの刺繍は高品質の代名詞 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
村の家並みを観察してみると、家屋の地面すれすれにある窓に気づきます。これは農閑期の副業に、女性が刺繍をする地下室の窓です。室内は一定の温度と軽い湿度が保たれ、繊細な仕事に最適な環境を作り出します。刺繍製品に加え、民族衣装、金物細工など、見るだけでも時の経つのを忘れることでしょう。
民族音楽と伝統行事
アッペンツェルでは、毎年3000人の有権者が集まる 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
アッペンツェルは、アルプホルンやヨーデルといった民族音楽の宝庫でもあります。歌詩のない自然ヨーデルが歌われる土地として知られています。
年間を通して様々な伝統行事も行われますが、中でも特筆すべきはランツゲマインデ。これは一年に一度、住民が村の広場に集まって地方レベルの問題を挙手によって決めるもので、直接民主制の原型を見ることができます。
以前はスイスの数か所に残っていた伝統行事ですが、現在はアッペンツェルとグラールスの2ヶ所のみ。アッペンツェルでは毎年4月の最終日曜日に開催されます。ここで女性の投票参加が認められたのはようやく1991年になってから。それまでは女性に参政権が認められていなかったほど、保守的な土地柄だったのです。
名物グルメはアッペンツェルチーズ
アッペンツェルではチーズ作り体験もできる 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
アッペンツェルと言えば、チーズでも有名。エメンタール、グリュイエールと同様、スイスを代表する半硬質のチーズです。アルプスのハーブを混ぜた塩水で浸すなど、伝統の製法は今でも秘伝とされています。辛口の白ワインと一緒にどうぞ。
近郊の観光スポットとアクセス
緑の牧草の中に家屋が点在する 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
ガイドは春から初夏にかけて何度かアッペンツェルに滞在したことがあります。特に5月下旬から6月上旬の時期は、周辺の牧草一面に西洋タンポポが咲き誇り、黄色い絨毯を敷き詰めたような景観が広がります。近郊のセンティス山やホーハー・カステンの展望台を組み合わせると、チューリッヒからの日帰り観光にも絶好です。
チューリヒ空港駅から列車を利用。ゴッサウ Gossau 乗換えで、約1時間半の道のりです。
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