注文住宅/トラブル・欠陥住宅・シックハウスを防ぐ対策

シックハウス最新研究2013~嗅覚がカギ?

2003年に建築基準法でシックハウス対策が追加されて10年経ちましたが、アレルギーや慢性疾患に苦しむ人や子どもたちの数は年々増えています。まだ原因解明されていない部分も少なくないものの、この10年間も原因究明の研究は続けられています。このほど開かれたセミナーの模様から、研究で見えてきた最新の相関性をお伝えします。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

エコチル調査

2011年からスタートした環境省「エコチル調査」のサイト画面

近年、子どもたちを中心にぜんそくやアトピーなど生活環境の中にある物質が原因と考えられる疾病が増えています。

シックハウスが社会問題化してから10年経った2011年には、全国10万人の子どもを対象にした環境省の疫学調査「エコチル調査」も始まりました。これは胎児期から子ども期の13年間、10万組の親子を追跡しデータ分析するという、日本で初めての大規模調査。シックハウス問題は終わっていないのです。

シックハウス問題は終わっていない

このほど、シックハウス問題に取り組む積水ハウスが主催となって、米国の公衆衛生・環境医学の世界的権威クラウディア・S・ミラー博士を招き、研究の最新結果を伝えるセミナーが行われました。

風景

シンポジウム風景

人は何故、シックハウスになるのか。セミナーで明らかにされたのは「鼻と脳はとても密接につながっており、母親が妊娠中に嗅覚(鼻)を通して化学物質に曝露(触れて発症)してしまうと、胎盤を通して胎児の脳にも影響を与えてしまう。母親の胎内で化学物質に触れてしまった胎児は誕生後、室内の化学物質に触れたりすると症状を発症しやすくなる」という衝撃的な事実です。

胎児の脳を直撃する?衝撃な研究結果

(以下、ミラー教授の会場配布資料より一部抜粋)

●化学物質や煙・排気ガスなどの微粒子が鼻に入ると、嗅神経から脳の嗅球、辺縁系に運ばれる。この間に化学物質を防御する血液脳関門はない。

●辺縁系に化学物質が入ると、その後の育つ環境で同様の化学物質が体に入った場合、その量がたとえ微量であっても、症状を誘発する可能性がある。

●母親が化学物質を妊娠中に曝露すると、約半分の影響を胎児が受け継ぎ、特に胎児の脳の形成時期に影響が出る。

●化学物質の影響を受けやすい胎児の脳神経形成時期は、妊娠直後1か月までの時期であり、母親は自分が妊娠していることが分からない初期にあたるため、子どもへの影響を防ごうと思っても難しい。

●したがって、胎児への化学物質の影響を防ぐには、常に健康な空気環境で過ごしていることが必要になる。

こうしたことから、ミラー教授は人間とくに女性が多くの時間を過ごす住宅において、化学物質のない空間づくりをする必要があるとしています。
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