2011年からスタートした環境省「エコチル調査」のサイト画面
シックハウスが社会問題化してから10年経った2011年には、全国10万人の子どもを対象にした環境省の疫学調査「エコチル調査」も始まりました。これは胎児期から子ども期の13年間、10万組の親子を追跡しデータ分析するという、日本で初めての大規模調査。シックハウス問題は終わっていないのです。
シックハウス問題は終わっていない
このほど、シックハウス問題に取り組む積水ハウスが主催となって、米国の公衆衛生・環境医学の世界的権威クラウディア・S・ミラー博士を招き、研究の最新結果を伝えるセミナーが行われました。シンポジウム風景
胎児の脳を直撃する?衝撃な研究結果
(以下、ミラー教授の会場配布資料より一部抜粋)●化学物質や煙・排気ガスなどの微粒子が鼻に入ると、嗅神経から脳の嗅球、辺縁系に運ばれる。この間に化学物質を防御する血液脳関門はない。
●辺縁系に化学物質が入ると、その後の育つ環境で同様の化学物質が体に入った場合、その量がたとえ微量であっても、症状を誘発する可能性がある。
●母親が化学物質を妊娠中に曝露すると、約半分の影響を胎児が受け継ぎ、特に胎児の脳の形成時期に影響が出る。
●化学物質の影響を受けやすい胎児の脳神経形成時期は、妊娠直後1か月までの時期であり、母親は自分が妊娠していることが分からない初期にあたるため、子どもへの影響を防ごうと思っても難しい。
●したがって、胎児への化学物質の影響を防ぐには、常に健康な空気環境で過ごしていることが必要になる。
こうしたことから、ミラー教授は人間とくに女性が多くの時間を過ごす住宅において、化学物質のない空間づくりをする必要があるとしています。