投資信託/インフレ(物価上昇)に備える投資信託の選び方

物価連動国債ファンドで増税に備える手も

デフレ脱却のために着々と政策が打たれていることから、年内にも消費者物価指数はプラスに転じるかもしれません。貨幣価値に目減り対応しようとしても、株式市場や為替市場が乱高下していることから、どうしても投資には及び腰になってしまいます。そんな中、物価連動国債の発行の再開が決まったとの報道がありました。株式や外貨投資ほどリスクを取らずに物価の上昇に対応できる商品として注目できそうです。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

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「物価連動国債」が5年ぶりに発行再開

物価上昇や増税に備えられるファンドがある!

物価上昇や増税に備えられるファンドがある!

2008年10月から発行が一時中断していた「物価連動国債」の発行が、2013年10月から再開される予定です。物価連動国債とは、物価の変動に合わせて投資家へ支払う元金や利子が変動する国債です。連動する物価は全国消費者物価指数(CPI)の生鮮食品を除く総合指数となります。

簡単に仕組みをご説明しましょう。利率1.0%、額面100万円の物価連動国債が発行されたとします。発行後、アベノミクスで掲げられている消費者物価指数の2%上昇が達成された場合、額面100万円が2%増えて102万円となるため、利子は102万円×1.0%=1万200円へ増えることになります。反対に、再びデフレが悪化になり、利子は98万円×1.0%=9800円になります。

ただし、過去に発行された物価連動国債は、デフレになり元本が減ると満期償還時まで保有しても元本割れとなりましたが、再発行される物価連動国債は満期償還時の元本が保証されることになっています。

当面は10年物のみ発行される予定で、2013年度は10月と来年の1月の計2回発行されるようです。残念ながら個人投資家は物価連動国債を購入することができませんが、2016年以降は個人投資家が直接購入できるように議論される予定です。将来的には、10年物以外の償還年限の物価連動国債の発行も視野に入れられています。

購入するなら当面は投資信託経由で

先に述べたように、物価連動国債は個人投資家が直接購入することはできません。投資するなら、当面は投資信託を経由することになります。

物価連動国債ファンドは、2013年6月14日現在3本しか運用されていません。みずほ投信投資顧問「MHAM物価連動国債ファンド」、同「物価連動国債ファンド3ヵ月決算型」、東京海上アセットマネジメント投信「東京海上・物価連動国債ファンド」だけです。「東京海上・物価連動国債ファンド」および「物価連動国債ファンド3ヵ月決算型」は純資産総額が10億円を切っています。取り扱っている金融機関も24と多く、かつ純資産総額が一番大きい「MHAM物価連動国債ファンド」を選ぶのが無難でしょう。

当ファンドの気になる運用成績は、2013年5月末基準のマンスリーレポートによれば、6カ月=1.73%、1年=2.07%、3年=15.14%、設定来=17.47%と堅実な運用成績です。現状の運用成績が続けば、物価の上昇に負ける可能性は低いと思われます。

消費税の引き上げでもCPIは上昇する

物価連動国債ファンドの運用成績の鍵を握るのが、将来的に物価が上昇するのか否かです。総務省が毎月公表している生鮮食品を除く総合指数(CPI)は、前年同月比0.4%の下落(2013年4月)となりましたが、東京都区部の5月分(中旬速報値)は前年同月比0.1%の上昇と、いち早くプラスに転じています。

一過性かどうかは6月、7月分の指標を見なければ判断できませんが、東京都区部のデータは、全国消費者物価指数の先行指標ともいわれています。東京都区部の指標がプラスに転換し、そのまま続いたならば、年内にも全国消費者物価指数がプラスに転換するかもしれません。

アベノミクスが掲げる消費者物価指数の2%上昇が達成できるかはわかりませんが、一つ心強いのは、消費税の引き上げも消費者物価指数に反映されるということです。最終的な消費税の引き上げは10月に決められる予定ですが、時期は別にして、消費税が引き上げられることだけは確かでしょう。

仮に2%の物価上昇が達成できなかったとしても、物価がプラスに転換する可能性は高いような気がします。さらに消費税の引き上げまで視野に入れれば、物価連動国債ファンドの運用成績は、派手さはないが今後も堅実な運用成績が続いていくと思われます。

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