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展開の予測がついても、引き込まれてしまう「秋日和」

小津安二郎監督の作品は、タイトルどころかストーリーまでどれもそっくりで、展開の予測がほとんどつきます。しかし、それでもぐいぐいと小津ワールドに引き込まれてしまうのです。その理由のひとつは、人物の座像が収まるくらいの動かないショットが多いこと。観ているうちにいつの間にか、自分も座卓を囲んで談話に混ぜてもらっているような心地になります。

投稿記事

小津安二郎監督の晩年に撮られた名作 『秋日和』

■監督:
小津安二郎
■主演:
原節子、司葉子、佐田啓二、笠智衆、岡田茉莉子、佐分利信、(端役:岩下志麻)
■DVD発売元:
松竹

まず、「主演」と書きながら俳優を6人も挙げてしまいましたことをお断りしておきます。どの俳優も存在感があるもので、どうしても書きたかったのです。


冒頭、3人のおじさんたちが、亡き友人三輪の七回忌に集まります。未亡人秋子にはアヤ子という未婚の娘がいます。おじさんたちの老婆心(ならぬ老爺心)がむくむくと頭をもたげてきます。これは嫁にやらねば。されど未亡人が1人じゃあかわいそうだ。というわけで物語が始まります。


ところで、小津安二郎の作品を完璧に識別できる人は果たしてどれくらいいるでしょうか。例えば『晩春』、『早春』、『麦秋』、『お茶漬けの味』、『東京物語』、『東京暮色』。無理です、降参。

タイトルどころか、ストーリーまでそっくりです。ところがです。水戸黄門の印籠じゃないですが、展開の予測がほとんどつくのに、これがぐいぐいと小津ワールドに引き込まれてしまうのです。

その理由のひとつは、小津印とも言える、固定カメラでローポジションから撮った画面にあります。画面が動かず、ちょうど人物の座像が収まるくらいのショットが多いので、観ているうちにいつの間にか、自分も座卓を囲んで談話に混ぜてもらっているような心地になります。

本作は晩年に制作されたものですが、けっきょく、監督は最後まで同じような、けれどもすばらしい作品を撮って亡くなります。滑稽でしょうか?
私などは、それを知ってすごく感動させられました。

「暑いねえ」
「そうですねえ」
「うん、暑いねえ」
「ええ」
「うだる暑さだねえ」

といった日の暮れるようなやりとり(想像です)に、「そうですねえ」と相づちを打ちかねないですよ。試してみてください。癒されますから。



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