鑑賞する度に解釈が広がっていく興味深い作品
■監督篠田正浩
■主演
岩下志麻
■おすすめの理由
近松門左衛門の「心中天網島」を映画化した作品。
紙屋の治兵衛と遊女の小春の心中を描いた物語です。
篠田正浩監督が松竹から独立してから撮った最初の作品で、若き監督の野心に満ちあふれた作品です。
この映画の興味深い点は、この近松の作品を現代の視点から解釈をしているところです。
本来近松の作品では情緒溢れるラストですが、この映画は徹底したリアリズムで描かれています。最後に心中する二人ですが、遺体は逆さまに置かれ、カメラは俯瞰で撮られ、まるで天から見放されたような印象を受けます。
舞台は遊郭ですが、資金の都合からちゃんとしたセットを組まず、舞台のように簡単なセットとなっています。床には墨で文字が書かれ、カオスの世界そのもの。まるで1920年代のドイツ映画のようにアヴァンギャルドです。
歌舞伎の舞台のように、黒子が映画に登場します。
この黒子は登場人物の動作を助ける役割をすると共に、登場人物の運命を導いているようで、この黒子が天の導きの役割を果たしています。
この映画は一見難解な映画ですが、鑑賞する度に、解釈が広がっていく興味深い作品。ぜひご覧になって下さい。